ブレーキとアクセル - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

  1. HOME
  2. >
  3. 時代を読む

VOL.53  2004年 05月号

ブレーキとアクセル

今回はリスクヘッジに関してお話しします。私は以前から今日の株高・不動産高になることを読んでおりますが、現在は不動産が相当動いていくことを想定し、エリアリンクでは、大型物件を含めてかなりの物件を購入させて頂いております。既に、高利回りの一棟ものということでは、赤坂の一ツ木通りや新橋の駅前などかなりの好立地の物件を購入させて頂きました。また不動産高が顕著に現れているのは、ファンド関係が好むような十億を越えるような大型物件です。これはかなり動きも激しく、相当な品薄状態となっております。その影響が地方にも飛び火している様子で、最近では空港近くの倉庫なども動いてきているようです。但し、すべてが良好というわけではありません。ワンルームの分譲マンションのまとめ買いが多く見られますが、そうすると自然と客付けをする為に賃貸で回すことが多くなってきますから、結果として賃貸市場全体の下落に繋がるということが十分にありえるわけです。ですから、これからの予想は株のようにまとまった値動きではなく、不動産は上がるものと下がるものがまだら模様で動いていくのだと思いま す。なぜなら不動産のマーケットには「人が入らないとどうしようもない」という特性がありますので、入居率が高いものとそうでないものでは利益結果に相当な開きが出てくるからです。

 一方、株は今日の個人投資家の増加に見られるように、株式売買単位の引き下げや、今まで高かった手数料が安くなるなど、全体的には手頃感が出てきている為、一般の方も参加しやすい形になってきています。そして個人が株によって得た不労所得増加の影響により、消費の回復にも繋がっているのだと思います。固定の収入は増えていなくても余禄といった形での収入増加が景気の回復に多少なりとも貢献しているのではないでしょうか。

 不動産に関してはファンド関係を見てもバブっているなという感覚があります。私自身来年以降、果たして今の勢いのまま行くのかな、いやそうではないなと大局的にはマイナス要素も考えていますし、不動産もこの勢いが急激な動きに関して楽観視はしていません。以前もお話ししましたが、物事というものは皆がいいなと思ったらすぐに悪くなるという傾向があるからです。ですから以前のバブル景気のような期待はせずに、常に冷静な分析が必要だと思って見ています。言ってみれば、アクセルとブレーキの踏み具合のバランスが非常に重要な時代なのだと思います。今はアクセル強め、ブレーキ弱めのバランスで様子を見ていく時期なのだと思います。秋のアメリカ大統領選挙の時期には当然景気にも不透明感が漂うようになり、その頃にはブレーキが強めになるのかなと私自身は予測しています。ですから今がいい時期だと言っても焦って買ってはいませんし、不動産に関しては借り入れに関しても、十年固定金利というスタイルをとっています。今は借り入れにおいては全てそういう体制を取っております。確かに変動のほうが安いのですが、私はあえて固定にして返済計画を現時点で固めてしまうようにしています。

  国の財政は結果としてまだまだ良くなっておりません。不動産が上がれば税収が上がって景気が良くなるという見方をされている方もいらっしゃいますが、今の国家財政が非常に厳しい状態に晒されているということは事実なわけで、デノミがあるかもしれませんし、貨幣の変更なども全く起こらないとは言い切れないと思っています。貨幣価値を落とさざるを得ない状況にもなり得るなと思っております。もし、このような事態が起きるとすると、事の発端はアメリカからなのかなという気もしています。アメリカ発の恐慌ということも今の状況で全く無いとは言い切れないなと思っています。そうなりますと、円ではリスクヘッジできませんし、ユーロもどうかなといった感じです。私の中では感覚的に貨幣というものはいつもただの紙に見えて仕方がありません。そうすると何でヘッジするのかというとゴールドが考えられます。ゴールドは預金のように金利もつかないし、金融商品のようにお金を生む商品ではありませんけれど、もし万が一ということへのヘッジということで資産の三分の一はゴールドで持つということも一つの手かなと思っております。ゴールドは、金融商品としての価値の上下はありますが、商品としての本質的な価値があるということで、ある意味ブレーキとしての役割を担っていると思っております。もう一つは、恐慌が起きた時に間違いなく起こりえることは食糧の問題です。食糧のことに関しては最近特に気にしていることでして、一番いいのはやはり缶詰かなと思っております。中国に缶詰工場を作りたいとまで思っているくらいです。食糧は腐るということがリスクですから、あらゆる製品を缶詰化するということはリスクヘッジの面でも利にかなっているのではないかと思っております。

 こんなに神経質にものごとを考えるのは自分自身でもさすがにどうかなとも思うのですが、いざと言う時はこのブレーキとアクセルという感覚は必ず役に立つものだと思っております。私共はお客様と毎日直に接しているので、そういった面でも現場に近く、生の情報が得やすいという強みがあります。反響数や温度などの微妙な変化も肌で感じることができるわけです。どんな時でも「何があってもおかしくない」ということを念頭にビジネスを行っていきたいと常に思っております。「いけいけ、どんどん」は私の肌に合いませんし、お客様が困っていることを本当に理解した上での再生、再利用ビジネスに力を入れて行きたいと思っております。商品一つ取っても最後の客付けにまで責任を持つということを大事にしておりますので、そういうことの積み重ねが不動産オーナー様からの信用に繋がっているのだと実感しております。不動産オーナー様にそれぞれに合った色んな商品を提案し、私共で責任をもってお客様をお付けして、最後までお客様と共に歩む、一緒に経営して いくということを大事に考えております。私共は最後まで結果に責任を持つ「実践コンサルティング」というやり方を貫き、世の中に本当の意味でお役に立つ会社にしたいと思っております。それからもう一つ余談となりますが、私共は権利関係が複雑な土地建物、底地などのコンサルも行っております。おいしい話で儲けるのではなく、困っていることを解決して差し上げて、多少なりともお役に立つことで見えてくることが沢山あるのだということを実感しています。

 今後私共は、この世になんとなく存在する会社ではなく、存在しなければ困ると皆様に思って頂けるような会社、困っている方が数多く訪れて下さる会社にしていきたいと考えております。そして将来は「行列のできるエリアリンク」となればいいなと思っています。こうしてお話していることも、何か一つでも皆様の参考になればと思っております。今後とも宜しくお願い致します。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道