激動の時代 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.54  2004年 06月号

激動の時代

今回は、株の急落等、時代の流れが大きく変わり始めているということを踏まえて、「激動の時代」というテーマでお話したいと思います。

 現実には私どももおかげさまで急成長を遂げさせて頂いておりますが、皆様からはいつも「スピードが非常に速いですね」と言われています。しかし私どもは時代の流れにやっと追いついているというくらいだと思っております。なぜなら時代の変化こそすごいスピードで進んでいるという感覚があるからです。

 最近、一時隆盛を極めた大手企業が衰退していくケースが多く見られます。このことに関して私が思っておりますのは、二十世紀はアメリカ式の経営が主流でしたが、何かの犠牲の上に企業が成り立ってきたことへのツケが今になって結果として出てきているのだということです。今までのアメリカ式の経営に象徴されるのが今の大手企業の衰退なのだという気がしてなりません。アメリカ式経営の中のひとつである業務のマニュアル化ということに関しては、安い賃金で確保した労働力をマニュアルによって最大限に使うということには効果的だったと思いますが、マニュアル化するということの形ばかりに偏りが生じ、その先にあるお客様の方を本当に向いていなかったことが今の結果に繋がっているのだとも思います。また、産業というのは戦いの縮図という側面がありますが、これからは競合しながら共生するという方法を取るべき時代に入ったと思います。

 私どもはキーワードとして「困っていることを何とかする」ということを念頭に商品やサービスを提供していくことをモットーとしております。そういう意味では、はじめニッチと言われてあまり注目されなかったものも、お客様の困っていることを解決してきたものは、今ではきちんと市民権を得ているという、ケースも多く見受けられるわけです。

 また今日のような激しい時代の変化も一気に上がったなと思ったら、途端に一気に下がる株の動きにも顕著に現れていると思います。私どもに関しては、大きな変化の中で一定のラインで落ち着き、そうなって改めて新たな展開に移れるという捉え方をしております。株についても不動産についても、今後大切なことは目利きであるということ、センスを研ぎ澄ますということが一層必要な時代になっています。こんな時代ですからひとつの選択が非常に重要なものとなってくるわけです。安易に選択することで、後々大きなトラブル、ミスにつながる恐れがあるからです。

 株に関しては、全体的な大きく上がって大きく下がるという今の流れの中では右往左往しないで、ある種見守るという冷静な捉え方も必要となってくるとは思います。そして、冷静に見守る中でも特に全体が下がった時こそ、どの会社が本当にいい企業なのかということが浮き彫りにもなってきますので、その中で見定めることも重要な視点だと思います。

 不動産に関しては、ファンド、リートの動きが非常に激しい中で、私の感覚では過熱気味という感じがしています。今の不動産投資人気からどうしても投資家からどんどんお金が集まるので、運用側も土地建物を購入しなければならず、そのために多少無理をした購入もあり得ますし、その中でうまくいかなかくなったものはファンドやリート同士で売買するということも起こり始めているようです。まさに都心の一部ではバブル時代のようであり、中古マーケットも都心に限っては今までに無いくらい活況を呈しています。ただし、都心と地方ではもちろんですが、都心においても売れるものと売れないものが一層はっきりしてきています。ですから株と同じように、同じ流れの中においても冷静に見定め、こういうものはいい、こういうものは駄目という目利きのセンスが非常に重要となってくるわけです。

 このように、まさに激動の時代こそ目利きとセンスの時代ということが言えると思います。あらゆる情報が氾濫している中だからこそ、その中で自分の視点でピックアップする目利きの能力とセンスが必要です。

 また、同時に世界や日本全体がどうなるのかということも捉えていく必要があると思います。悲観的に見れば、中国の経済の勢いが止まれば、アメリカにも影響が出ますし、アメリカがおかしくなれば全世界中に不景気の波が押し寄せるということにもなるわけです。日本に関しても、色んな方が預金封鎖を含めて、色んな本を書いていらっしゃいます。これも全く起こりえないとは言えませんよね。いざとなるとお金がただの紙になるということも起こりえるわけですから、一部をゴールドでヘッジしておくということもひとつの手かもしれません。ただし、これらは今日明日起こる話ではありませんのでこのような手を打つことがベストかどうかはこの段階では言い切れません。儲けようという感覚ではなく、プラスを生まなくてもリスクヘッジできればいいという観点で捉えることが大切ではないでしょうか。言ってみればいざという時の予防策ですね。

 このように時代はどんどん変化していますが、いい悪いは別として、これまでの日本は、戦争やバブルなど大きな失敗という名の貴重な経験をしていますから、日本はもちろん海外の国にとっても二度と同じ間違いはしないといういい手本となっているのだと思います。また、お金というものも、やはり経済の中でこれからは今までより一層サービスを中心として回っていくのではないかと思っております。商売の基本的な考え方にもかかわらず、今は「困っていることを解決する」ということに目を向けるということ自体忘れ去られている気がして残念に思えます。どうしても自分たちが今まで作ったものが正しいという感覚を捨て去れない方も多いのですね。商売においては、お客様が困っていることを見つけ、それを解決したことで感謝されたことの対価が利益ということは基本ですが、これらは今日のような激動の時代にこそ特に重要であり、改めて見直すべき考え方だと思います。一時のブームに踊らされるのではなく、自分達のスタンスの中で基本に戻って、コツコツ着実に進んでいくことが結果後々大きな差になるのだと今まさに実感しているところです。ポイントは原点を大事にするということですね。起死回生を狙って一発当てようとするのではなく、原点に戻って今抱えている問題点を洗い出し、お客様が本当に満足する方法、サービス、商品は何なのかということを真剣に考えてから形にして、それをコツコツ続けていくことに成功の鍵があるのではないでしょうか。原点に戻ることで色んなものが見えてきます。今日ほど御用聞きの精神が必要とされている時代もないと思えます。私どももまだまだ未熟ながらも、いつもこの原点に戻るということを大事にしてきたおかげで、非常に効を奏してきたと思います。おかげさまで急成長させて頂いておりますが、私どもの事業もいたって素朴なところからスタートしております。激動の時代だからといって右往左往するのではなく、原点に戻るということこそが重要なのだと改めて感じております。

 私の考えがこれをご覧になっている皆様にとって何か一つでもお役に立てば幸いです。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道