センス(感性)を売る時代 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.58  2004年 10月号

センス(感性)を売る時代

今回は、センス・感性を売る、豊かさを売る時代というテーマで、お話ししたいと思います。

 日本は、経済大国で、豊かになったと言われていますが、本当に豊かになったのかといいますとどうでしょうか。テレビなどで、海外旅行など本当に豊かな生活が、容易に目に入るようになりましたが、現実に自分たちの生活がそこまで豊かになったのかというと、それは難しいのではないでしょうか。衣食住の衣は、ある意味で、かなりのレベルまできているといいますが、日本人というのは、ブランド志向というか、センス・感性をブランドに頼っている傾向が多々あり、そのためにそこそこのレベルになっています。さらに、食住はどうかというと、結構厳しいものがあって、一部の人たちが豊かさを味わっていて、平均的に皆が味わっているのかというと、それは難しい。結局は、二極化が進んできて、本当に一部の人たちだけが、そういう衣食住のセンス・感性の満たされた生活を送っているという感じがします。

 ところで、「センスがない」などと言われてもあまり気にしない方が多いと思うのですが、「感性がない」といわれると非常にきつい感じがすると思います。センス・感性というのは磨き続けなければならないものだと思います。洋服であれば、色々なものにチャレンジしてみる。また、食もチャレンジできるかもしれませんが、住の部分はそんなにチャレンジできないと思います。ですから、これらはどのように考えたらいいのかというと、やはり感性を磨ける場にでてチャレンジしていくというのが、非常に重要になってくると思います。

 私は、非常に収入の少ないときから、月に1回ですが、高級なホテルで食事をしてみる等のチャレンジをしていました。あるいは住宅に関しても、展示場やモデルハウスといったところには、必ず行っていました。その中で、まだまだ足りませんが、感性というものが徐々に磨かれてきて、非常によかったと感じています。

 我々は住宅に関わる中で、スペース・空間をそのまま貸している、売っているという感覚があると思います。私は今後、センス・感性を加えた売り方、つまり色合い等ということではなく、住むことを想定したセンス・感性を加えた提供の仕方が必要だと考えています。服にしても、なじまない服をきてみたら、徐々に似合ってくるという事があると思います。初めから、自分のセンスを壊して、センスのあるそういう部屋・住宅というものを家具・家電を含めて提供してもらう、そんな時代がきているのかなと思います。例えば、食に関しても、その場の雰囲気というのは非常に重要ですが、住宅に感性・雰囲気というものを、付け加えた形で提供していきたいと考えています。例えば、椅子ひとつでも、自分の中でセンスを磨けるものがあるでしょう。我々業界ももっともっとセンスを磨く必要があると思いますが、成金っぽいセンスではなく、さりげないセンス、さりげない感性というのが、これからは重要になっていくと思います。

 また、常々考えているのですが、普段の生活の中で、感性・センスを磨くということは、充分にできると思います。例えば、私もゴルフ場に行っても、まずキャディさんには気を遣う様にしています。なぜかというと、キャディさんがいい気持ちになってくれれば、自分にとっても、非常にいい空間、落ち着いた空間、快適な空間ができるからです。すると、非常にのびのびともできますし、楽しくもできます。まず気を遣う事、今日は是非楽しく一日やりましょうね、とか、ちょっとしたときに、旗をもって差し上げるとか、ちょっとしたお手伝いをすることで、キャディさんも気持ちよく仕事ができるわけです。あるいは、飲食店に行っても、店員さんにちょっとした心遣いや、ポチ袋にお礼を含めて渡したりします。

 やはり、そこにいる人たちに気持ちよくなっていただくことで、自分たちにとって非常に居心地のいい空間ができるという事、これは全てにつながっていくと思います。物をお売りしていたり、物をお貸しする際、どうすれば気持ちよくなってもらえるかを考えるという事が、ビジネスを成功に導くことができると思うのです。そういった考えなしに、これはいいからと押し付けるのではなく、従来であればギブアンドテイクという事が、ギブ・ギブになる、その気遣い・センスが重要な時代になってきていると思います。

 よく話すのですが、私は、毎日が仕事といえば仕事といえるし、毎日が遊びといえばそうともいえる、そう思っています。どちらかといえば、普通は遊びは遊び、仕事は仕事と切り分けますが、そういう考え方は違うような気がしているのです。生活の中で、センス・感性が充分磨かれていき、人生をどう楽しむか、どうすれば人は楽しんでくれるか、これを考えると、仕事につながっていきます。ところが、自分だけの事を考え、自分だけが楽しければいいと考えれば、それは、単なる遊びで終わると思います。その人の人生は自分でつくるといいますけれども、結局はいろいろな人に気遣いながら、まわりの人を大切にしていくということで、色々な事を生み出していくし、好転につながるのではないかと思います。

 最近私が非常に大切にしている言葉があります。信頼という言葉ですが、こういう人と付き合ったら、得とか損ということではなく、この人は絶対に裏切らないなという事を重視して、そういう人と付き合っていけば、本当にいい関係、そして、だれかが困っていれば、そういう人を紹介してくれる、そういう関係が築けると思うのです。これからは、信頼できること、信頼できる人が大事だと思うのですが、これももしかしたら、感性かもしれません。私は今、1万社規模の信頼できる人たちのネットワークをつくりたいと考えています。信頼できる人たちのネットワークであれば、様々な局面で、いい気持ちで仕事ができて、利権等ではなく、お互いの信頼関係が、色々なものを生み出す事ができると思います。

 信頼できる人と付き合い、大切にしていく、これがさらに、色々な事につながっていくと思います。感性は、思いやり、気遣いから現れてきます。そのために、お金があるとかないとかの次元ではなく、感性を見に行く、体験しに行くといったことが、その人の領域を拡げていく様な気がします。そのセンス・感性の延長上に、豊かさがあり、安らぎといった事もあると思うのです。ぜひこれらの話の中に何かを見出していただければと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道