本物しか残れない - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.72  2005年 12月号

本物しか残れない

今回は「本物しか残れない」というテーマでお話しします。以前、本物の時代というテーマでもお話ししましたが、言葉ではわかっていても理屈ではなかなかわからないという事が多いと思います。例えば、今の耐震強度計算の偽造による問題もまだまだ多方面に波及すると思われます。これもデフレ時代をむかえ、より安くという面を追求した結果から起こった事です。

 ごまかすこと、その観念が時代的に無理となり、あらゆることがオープンになり、ある局面では内部告発も当たり前になってきて、人間の良心や場合によっては恨みも含めて隠すことはできなくなってきています。多くの情報を持ちうる個人がインターネットを通じて自身からも情報を発信できる時代になっているにもかかわらず、世の中が非常に厳しい状態ですから、例えば振込み詐欺等もそうですが、様々な面でごまかし、ズルをして利益をあげるという事例がどんどんでてくると思います。現実には、本物であることを選んでいかないと厳しい、という事にいまだ気づいていない人がたくさんいるという事だと思います。

 「稼ぐためには手段を選ばない」というやり方では、必ずどこかで障害が出ます。本物の時代とは、もしかすると良心の時代であり、人間の良心に基づく事業をやっていくことが非常に大事な時期になってきているのではないでしょうか。どちらに目を向ければ、事業が育っていくのか?当然、お客様に目を向け、お客様が満足して、お客様が納得して、お客様を裏切らないというテーマが必要です。お客様がいてこそ、事業は存続すると思います。しかし現実は、数字に追われ、お金に追われて、全てに追われ、やがてそのビジネスには破局がくるといった事が多いと思います。やはりお客様に対し徹底して目を向けるべきです。瞬間的にでもお客様をごまかしたり、瞬間的にお客様を無視したりしたことは必ず会社に何倍にもなって返ってきて、そして危機に陥ります。そのくらいのことが起こりえます。コンプライアンスも含めてあらゆる問題が厳しくなっています。企業内のモラルが非常に重要で、企業理念・経営理念を正しくしっかり教育していかないと大変な事になる時代です。

 私個人の考えですが、日本は民主主義だと言われていますが、海外の方と話していると、社会主義ではないか、と言われる事があります。機構、仕組み、そういうものに全て権限が決められていて、俗にいう資本主義より共産主義のイメージがありますが、言いたいことは言えるという意味で、大衆は完全に民主主義です。ただ、今後医療等、今までは触れてこられなかった面も厳しくなっていく気配があります。ある関係者から聞いたのですが、これからの日本の医療は低下していく可能性があるのだそうです。医療が刑事事件化するのは日本だけらしいです。そうなると手術もこわいですし、人はデリケートですから、癌だからといって医者は勝手に手術もできません。リスクもありますが収入もあり、ある程度技術を磨いて経験もつんでいかないといけない、といったリスクがある反面本物は生きていけるべきなのでしょうが、日本社会の制度ではそういう人を育てにくい構造になっています。ですから優秀な人は海外へ出て行ってしまう。時代背景が本物を要求しているのに、そこに大きな壁があることも事実です。

 それは日本の社会が制度にしばられており、例えばアメリカのように合理的だったらいいですが、ある意味では自分達の利権も含め、制度、形にこだわりすぎなのかもしれません。あくまでも人間が主人公ですから人間を信じる、ただし間違えたら罰せられる、良いことをしたら誉められる、単純ですが、こういう事からきちんとしないといけないのですが、そうなると、ある意味アメリカナイズせざるを得ません。その中で生き残るのは非常に大変で、本当にお客様中心に考えているか、お客さまが何を考えていて、何があれば満足し、お客さまがどういうことを求めているか、我々の場合は御用聞きという言葉を使っていますが、これらが答えではないでしょうか。ビジネスにおいて、お客様はどういうことに満足して、どんなことを欲しているか、感じているか、何が欲しいのか、どんな考え方をするのか、お客様にも色々な層がいますが、今後の経営とはそういうお客様の層に対してターゲットを絞り、細分化して分析していかないと厳しいと思います。お客様が満足し、感動、喜び、便利の答えが収入になるのだと思います。

 本物の時代は、お客様つまり人がどう満足して、どう感動し、どう喜び、どう便利さを感じているかしかないと思います。これに基づいて会社の組織があり、個人があり、色々な商店があり、お店があり、業種があると思います。ここに戻らないと大変なことになります。

 ただし、お客は時代とともに変わります。早い時代だから要望も早く変わります。それに対して都度答えていかなければならない、非常にやりにくい時代だと思います。本物といいながら、お客様の満足を求めていくと、そのお客様が変わっていく、なにが本物か見極めるのは非常に難しいです。

 先日こんな話をきいたのですが、ある食品会社2社を比べた場合、A社は味を一筋とし、創業来全く変えなかったそうです。対してB社は微妙に味を変え、時代に合った形でその食べ物も微妙に甘さを控えたり、様々な工夫を凝らしていったそうです。その時代時代で食生活も変わってきますから、それに対して何をするか考える必要があります。我々で言えば、昔はバナナが大好物、ただ今はそんな時代ではないから、何を提供するか合わせながら、ごまかさない商品をつくっていく、ごまかさないサービスをつくっていく、これが重要だと思います。

 次回、もう少し具体的にお伝えできると思いますが、お客様は微妙に変化して、わがままで、言いたい事をいいます。そこをどういうことで満足させるかを考えないと良い発想もできないし長続きしません。逆に言えば、ここにこだわると、どんな変化があったとしても答えはでてくると思います。本物の時代とはお客様第一主義。これは非常に重要ですので、もう一度足元に戻って、冷やかしでくるお客様はいない、例えば道を聞きにきた人、提案をもってきた人もお客様、我々に関わる人がみなお客様という考えに立ち戻り、その人たちが会社を愛してくれて、すばらしいと言ってくれたとき、初めて業績も上がり、結果的に高い評価を受けると考えています。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道