ファンドの先を行く - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.76  2006年 04月号

ファンドの先を行く

今回は「ファンドの先を行く」というテーマでお話したいと思います。今、不動産業界では、かなりの勢いでファンドの資金が動いていて、相場や状況が短期間で変わってきています。例えば、ファンドが一時期都心の物件を買っていたと思ったら、今度は主要都市、その後は第二都市、M&A、ホテルというように、巨額の資金をもって非常に速いスピードで一気にそのマーケットを支配します。そのような状況下で、初めは10%ぐらいだった利回りが5%になってしまったり、そのお金はリートにも流れています。

 このような速いスピードの世の中で、我々も勝っていかなければいけないのですが、一般の人たちは物が無くなって商売ができなくなるという、非常に厳しい状況が出始めています。当然、売買に関しても、メインビジネスとしてやっていた方たちが非常に商売しづらくなっている。これは、この業界自体が再編される大きな要因の一つになると思います。

 隙間ビジネスというものもありますが、当然その隙間にも限界が来ますし、ホテルなどを含めファンドが不動産にうまみがあると思えばさらに力を入れて、どんどんお金が流れてくると思います。その金額たるや、一般の企業が買うには追いつかないくらいの額になるのではないでしょうか。ましてやファンドは、デューデリをして非常にいい物件だけを扱っていますが、これからは中古で多少何かあっても無理をして物件を買い集めて行くと考えています。ですから条件が甘くなってくるということも起こりえます。そういうこともあり、これからファンドに勝っていくということは皆さん至難の業だと思っておられると思います。

 当社の例で申し訳ございませんが、我々は先んじてよりいい不動産を先に仕入れられたという自負がございます。また、不動産を色々な形で有効活用できましたので、家賃も安定している状況となっております。それはどうしてかといいますと、私は自分がお金をたくさん持っていたら何を考えるかという事を常に考えていて、どういう物件が儲かるのか、得するのかという事をデューデリ以前に、不動産に関するプロとして見ているわけです。

 不動産は投資利回りが10%あれば、仮に金利が15年ぐらい前までの平均金利の7%まで上がったとしても、維持していく事ができます。こういった考えから私は建物が少し古い、規模が小さい、裏通りにあるだとかに関係なく利回り10%というスタンスにこだわってきました。

 我々はプロである以上、その物件が将来において空き室が増えるか増えないか、空いたとしても打つ手が有るか無いかという事を瞬時に考えられなければいけません。デューデリというのは確かに必要ですが、物件を見たときに大きな問題がないかということをある程度計算できるノウハウを持っていないとプロではないと思います。我々が都心や地方の物件を買って来た中で、ファンドがそれを追いかける形で物件を買って来ました。そのとき私は、このまま同じように不動産を買い続けても、ファンドの勢いには勝てないと思い、ホテルの購入に走ったわけです。それも運営会社にすべてお任せして10%で回る、一等地の中古ホテルを狙っていきました。即座の判断でしたから、どんどんいい物件が買えました。そのホテルもほとんどが10%で回っていて所有しながらホテル運営のノウハウを築き上げてきました。

 我々は、中古のホテルの次に、開発型ホテルに向かっていきます。都心では買える物件が少なくなっていますが、1ヵ所だけ土地の権利が複雑になっていたり、或いは建物がくっついているなど、少し複雑な物件になるとファンドは買いません。そういうものを買い土地をまとめて開発型のホテルやビジネスホテルを作るとか、新しい開発型のビジネスを進めています。大多数がやろうとしたことの先を行く、あるいは裏を行く、そういうところをいつも意識しています。トランクルームのようにファンドがあまり扱っていない事業ができるビルや倉庫も仕入れていきます。

 これからの不動産ビジネスというのは本当のコンサル業にならないとだめだと考えています。プロのコンサルにならなければいけません。ただ「いいものが仕入れられた、ああ売れた、よかったな」というのではなくて、いろんな問題を解決する能力、処理できる能力が全企業に必要になってきています。あの会社に相談すると解決してくれるなと思わせる、本当の意味でのプロ化がこの業界に要求されているのだと思います。

 私は社員にも言っているのですが、掃除ひとつをとっても誰にも負けないという事も大事だと考えています。不動産だったら借地には絶対負けないだとか、こういう商品だったら絶対負けないだとか、商品を開発して知識も解決能力も全て持っているというように、何かに特化して問題解決能力を身につけていかないと全部尻つぼみになっていくと思います。

 これからは、ある意味では面白い時代、ある意味では差別化される時代となり、不動産業界自体も非常に淘汰されてくるでしょう。要するに、不動産業界が金融の時代に入り、資金も株と同じように極端な流れができていて、相当先見性を持って早い判断をしてやっていかないとあっという間に終わってしまいます。3ヵ月おきに手を打ち直していくくらいの気迫でやらないと大変な時代が来ているのだと思います。

 先を読み、裏を読み、手を打ち、考え、結論を出す。力をつける、やりきるということを常にやらないと、本当に伸びる企業には成れないと思っています。是非、こういったことを徹底して、プロであるという意識を持ってこの時代を生き抜いていきたいと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道