長期化による二分化 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

  1. HOME
  2. >
  3. 時代を読む

VOL.110  2009年 02月号

長期化による二分化

   今回は「長期化による二分化」というテーマでお話します。

  昨年から続く金融危機は、今までの金融の常識が根本から変わり、金融工学という魔法の杖は壊れたような印象を受けます。12月頃から金融機関が、本当に助けられるところと助けられないところ、相談に乗る相手と乗らない相手を二分化し始めていると感じます。民事再生が流行り言葉のように出ていますが、金融機関からすれば民事再生というのは本当に悪法だと思っていると考えています。諸事情が沢山あって、話合いどころではなく、交渉事が、けんもほろろに断られ、仕方なく民事再生という道を選ばざるを得ないという状況もあるかもしれませんが、本来は根気良く金融機関と話し合いながら色々相談をして、お互いのメリット、お客様に迷惑を掛けない為の善後策を考えていくことが企業のあるべき姿だろうと思います。ここ数ヶ月をしのげば何とかなる程度の気持ちでは長期的な話ができず、短絡的になりやすい為、要注意です。厳しい状況が数年続くことを視野に入れて、一つ一つの問題を解決するために誠意を示して交渉をしなければなりません。

  不動産業界は今の局面では、棚卸資産の処理が急務です。うまく売却ができたとしても赤字が出ることが明らかな状況では爆弾を背負ったまま経営をする事になります。早くて今年の3月期から低価法が強制適用になりますので、時代の変化、流れを読み、最悪でも損をしないような部分まで減損しておく事が必要です。ただし、中途半端に評価損を出すと、次にまた赤字が出るという事になりますから、膿の芯も全部出し切ってこの時代を乗り切ると、その大きな判断をしなければいけない時です。膿の芯が残ったままにしておくとまた化膿しますし、これから3年、5年と厳しい状況が続いた時に命取りになると思います。

   また、一つ注意をしなければいけない事は、こういう厳しい時代に旨い話に乗らない事。このような時代に旨い話は無いと考えるべきです。苦しい状況に立たされると、どうしてもいい話に乗りたいという気持ちもあると思います。藁をもつかむような気持ちで焦って打った手は最後の最後で致命的な事になります。旨い話は無い、嫌な話ですけれど本当に信じられると思えるまで疑ってかかることも必要です。

   今年は基礎をしっかり固める為の一年間であり、足元をきっちり固める事に専念するべきだと思います。それができないと会社は残れませんし、先程述べたように金融機関、社員含めて根気良く話をして、現場も見直して、一つ一つをしっかり見直したところが、この厳しい状況を抜け出した時に素晴らしい会社になると考えています。現実逃避してそれができない企業はやはり民事再生、倒産、あるいは衰退という道へ行ってしまうでしょう。逆に、何年か後、あの時があったから今がある、というものを作れる最大のチャンスという捉え方もできます。ですから、こつこつと会社を見直し、現場、原価、人員の見直しをして、会社を立て直すにはとても良い機会であると同時に、会社を存続させるための大きな決断が必要となります。前回、「今からでは遅いかも?」というテーマでお話をしましたが、その決断もできる限り早くしないと手遅れになります。

   ですから、今回の時代の変化で起きたことを真摯に受け止めて会社を見直し、10年20年30年後、また100年200年後も存続することを目指す為の大きな基礎作り、組織作りでもあると思います。ある時に起死回生の事が起こって、良い方向へ向かう事もあるかもしれません。それでも、ここで基礎をしっかり固めておかないと、また同じ事の繰り返しとなってしまいます。本当に100年先を見越した、大袈裟かもしれませんが、まず20年30年先を見越した大きな基礎作りの年となる事を期待致します。私共も一年半掛かり、一つ一つ慎重に決断してきましたが、今年はその結果を出す年になります。是非期待して頂ければと思っております。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道