生き残りの二極化 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.114  2009年 06月号

生き残りの二極化

 今回は「生き残りの二極化」というテーマでお話しします。

 今、百年に一度という未曾有の不景気に見舞われている中、これまでの資本主義の考え方が正しかったのかどうかを問われるくらい、大きな時代の境目を迎えているのではないかと感じます。

 特に今後日本では、人口減少となり、老齢化が進んで市場が縮小する予測の中、商業においては売上を上げ続ける事が難しくなっています。今は、この状況を読めなかった企業が良いか悪いかという事を論議する時ではないと思います。

 時代は大きく変わったという事です。最近、成果主義の否定や利益追求の社会に問題があったのではないか、という事が取り上げられています。確かに数字を追わざるを得なかった現実はあると思います。

 昔から「御用聞き」という言葉があります。これが基本だと考えます。お客様は何を求めているのかを考え提供して来た企業が、今後も生き残るという事ではないでしょうか。この基本に忠実な企業は、お客様が生き残らせてくれるのだと思います。ある時期からこの事を忘れてしまい、規模の拡大に専念した企業が増えたのではないでしょうか。これらの企業は、おざなりになって押し付け的な商売になってしまったと感じます。

 規模の拡大の為には、借金が非常に多くなります。企業は借金に追われ、自分達のやっている事が本当にお客様の為になっているかという、この基本的な理念を忘れている事が沢山あったのではないでしょうか。
 これから急に状況が良くなる事は考えにくいです。企業は金融機関からの借り入れに過度な期待は持てません。そういう状況下では、経営をやって行ける企業とやって行けない企業に二極化されて来ると考えます。

 企業は無借金でもやって行ける状況になっているかを常に確認しなければならないと思います。

 経営者の皆さんは必死にやっています。しかし、経営者の方が負った傷はあまりにも大き過ぎて、もう何をやっても最終的に厳しいだろうと思うところが出てくるのではないでしょうか。
一生懸命頑張って金融機関との交渉をして改善出来た企業、未だに交渉が必要な状況の企業や、金融機関からもう無理ではないかと判断されている企業等沢山あると思います。
その中で、去年から今年の初め頃までは、金融機関との調整が取れなかった企業は民事再生の様な結論を出さざるを得ませんでした。

 倒産や民事再生は金融機関にとっても痛手を負います。ですから、金融機関は回復が厳しい企業と判断をしても、返済計画を変更したり、別に担保を取ったりしながら少しずつ回収を行います。
金融機関はなるべく傷を浅くしようと丁寧な回収をしているというのが現状だと考えます。

ここのところ多かった黒字倒産の様に、すぐに現金が無くなる様な仕組みの企業は早期に整備され、それが一段落ついたのだと思われます。

 金融機関との交渉により返済計画変更ができた企業は、業績がなかなか上がらない中コストカット等を行い、年間の返済額が軽減されている事によって何年間かは保てる状態にいます。
その変更条件終了が到来すれば、企業はまた金融機関の判断を待つ事になります。
今はそういう意味では、一時的に平穏に見えるかと思います。

 ある時になると、金融機関は強硬な手段を取らざるを得ないという状況になると考えます。
今、金融機関は恐らく貸倒引当金をあてる等の最終的な処理に入ろうと準備をしています。

但し、準備が出来ているからといって、金融機関は企業を切って行けばいい訳ではありません。
金融機関が負う傷をなるべく浅くしないと、問題が吹き出してしまいます。そうなると、金融機関は公的資金が必要な状態になってしまいます。

 個人的な意見ですが、五月が終わって決算期以降になるのか分かりませんが、どこかの金融機関が動き始めると一気に表立った動きが始まるのではないでしょうか。

 生き残れた企業は安心せずに、今の自分達のサービスと商品が本当にお客様に喜ばれているかを考える事が必要です。
そして、企業は、社会とお客様に認められるようになる事が非常に大事です。市場は限られており、世の中は不景気です。企業は今まで通りのビジネスが簡単に通用するとは思わない事です。
サービスの向上、価格の見直しや社内の体質改善等のコスト意識を高める事をやって行かなければならないと思います。

 今、生き残れる企業は、生き残る事と同時に、体質改善も全部終えることが必要です。そうでないと、次の時代に向かうには厳しいと感じます。
今は大きなチャンスでもあります。
事業を伸ばすチャンスではなく、いい企業をつくる時を迎えています。

 社会にとって、本当に必要なものが残ります。この状況の中、社会に認められ、お客様にも認められる企業になるという事が非常に大事だと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道