エリアリンクの転換期 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.180  2014年 12月号

エリアリンクの転換期

 今回は「エリアリンクの転換期」というテーマでお話しいたします。
 今年は、9月と10月、2回のアメリカ視察を通じて、ストレージや不動産、そして経営の考え方の転換点となるような大きな気付きを得ました。
9月は、SSAという6,000社ものストレージ事業に関わる会社から組織される全米で一番大きな団体のイベントに参加しました。今回で5回目になりますが、毎年、参加することで徐々に信頼関係も出来、米国ストレージのソフトウェア会社やマーケティング会社、私たちと同じようなストレージ運営会社などと情報交換を行っています。そこでまず感じたのは、ストレージ事業は、これから日本でも爆発的に成長する分野であるということです。SSAの理事は、運営室数が10,000室程度の中小規模の企業経営者方が務めていますが、皆さん、口を揃えて「こんなに大きいマーケットになるとは思わなかった」と話されます。アメリカの市場はまだ伸びているといわれていますが、既に2,500万室あります。日本ではまだ30万室規模ですから、圧倒的な市場規模の差をみても、継続的な成長が期待出来る分野だと改めて感じています。
また、アメリカでは競合同士でもデータを共有し、互いに情報をオープンにしていくことで、共存・共栄しながら発展しているそうです。一方、日本では緻密なマーケティングを行わず出店を進めるため、時に競合企業と共倒れになるリスクが発生する可能性があります。業界全体の成長のためには米国と同様にデータの共有が必要だと思っています。
全米第4位の「キューブスマート」の副社長と面談の機会がありました。そこで常時、稼働状況はじめ、色々な切り口で物件のデータが抽出出来、分析に基づいた現場運営が効率的に出来る「レベニューマーケティング」という手法があることを知りました。振り返って日本では商品づくりも集客も「なんとなくこう思う」という経験則がベースになっている現状があるように思います。今後、エリアリンクではデータ蓄積・分析のシステムを順次、導入していきます。
そして10月末に再訪し、キューブスマート社の本社、現場を視察させて頂きました。この見学で、電話のシステム、オペレーターの教育制度が合理的に整備されていることを知り、日本のストレージ業界はまだまだ米国に見倣うべき点が多いと感じました。一方で、アメリカの経営者は非常に優秀な方が多いのですが、現場の人材のレベルでいえば、日本にはより勤勉な人が多く、もっとストレージ先進国のアメリカから良いやり方を学んでこの国民性を活かせれば、どの国よりも高水準なストレージのサービスを提供出来ると思っています。
 経営への姿勢に関しても身震いするような気付きがありました。彼らと話していて驚いたのは、Profit(利益)という言葉は全く使わずに、代わりにCash flow(キャッシュフロー)で話をすることです。どれだけお金(キャッシュ)が残るかが最も重要で、その視点が常に経営のベースにあります。日本ではキャッシュよりも売上や利益、従業員数などが先にきて、ときに黒字倒産も起こります。より安定した成長を遂げていくために、エリアリンクはキャッシュフローを意識した経営を行っていきます。
 話は前後しますが、9月には、フェニックス州で不動産事業も視察しました。そこでは物件の付加価値を上げる取組みの緻密さに驚かされました。まずはマーケティングに基づくリニューアルのレベルの高さです。エリアの特性、住人の属性を分析し、例えば、ペットの飼育率が高ければ、ペット専用のスペースを設け、子供を持つ世帯が多いエリアであれば、子供の喜ぶような施設を作ります。そういった地域特性を理解し、ニーズを分析する仕組みがあり、データに基づいたリニューアルを行っていたことが非常に印象に残りました。また各物件には担当のマネージャーがおり、住民同士のイベントにも積極的です。ハード面ではマーケティングに基づいたリニューアル、ソフト面では住民が喜ぶような環境を整えることが当たり前に根付いています。日本ではマーケティングへの意識が低く、感覚的な判断でリニューアルをしているように思います。また、ソフト面のサービス提供に関してもまだまだやれることがあるでしょう。付加価値を高める不動産運用に関しても参考にしていきたいと感じました。
 例えば、コンビニエンスストアなどのフランチャイズビジネスはアメリカで発祥し日本に入ってきましたが、今や日本の方がしっかりとした仕組みを作って展開しています。特に不動産業では、東南アジアなどの新興国へ進出していくことよりも、アメリカのようなビジネスの歴史が長い国から学び、そこで学んだことを日本流に進化させて、より良いサービスを作っていくことが更なる成長には不可欠でしょう。
 今日お伝えしたような気付きをもとに来年も新しい取り組みに挑戦し、その変化をまた皆さんにお伝え出来ればと思っています。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道