上り坂、下り坂、まさか - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.188  2015年 08月号

上り坂、下り坂、まさか

 今回は「上り坂、下り坂、まさか」というテーマでお話しいたします。不動産市況としては金融が緩んでいて、利回りが4%前後でも売りに出れば動くという好景気を感じさせる流れが続いています。金融機関が富裕層への営業を強化している様子をみると、好況はごく限られた一部の層だけで演じられている印象もあります。しかし不動産の価格は、バブルのときのように全国的、全体的に価格が上がるのではなく、二極化が進んでいます。駅からの遠い物件に値がつきにくくなるなど、選別の視点は以前より厳しくなり、目利きの買い手も増えているのでしょう。
 国外に目を向けるとギリシャや中国など不安定な状況が続いています。ギリシャの金融支援の問題は一旦、決着がついたように報道されていますが、先延ばしにしただけでいつかまたもっと大きな問題となって市況に影響を及ぼすのではないかと捉えています。中国では一部の地域で人口を超える数のマンションを建築している例すら見受けられると聞きます。今後の成長を期待した過剰な不動産の供給は、情勢になにか変化があったとき、真っ先に混乱を引き起こすでしょう。
 「人生には、上り坂、下り坂、まさか、がある」というように、人生だけでなく、世の中にも「まさか」と思う出来事が起こるものです。良い状態が続いているときは、悪い状態を想定したくないのは、人間の当然の心理ですが、不動産業に身を置き、40年近く市況の変化をみてきたなかでいえるのは、景気の良い時期が続けば続くほど、同じくらいの期間、不況の時期が続くことが多いということです。
 社会の変化からもこの好況が永続的なものであるとは考えられません。少子高齢化は急速な勢いで進んでおり、人口が減っていくことは目に見えています。不動産に関連した視点でみると、小売り店舗が入るような不動産にも変化がでてくるでしょう。実際に、インターネットの普及で、実店舗で購入するよりも通販で購入する人が増え、小売業にとっての店舗は今までの「買い物をする場所」から「通販で購入するための商品を下見する場所」「ショールーム」になりつつあります。数十年前にはなかった技術は、より効率的で新しいやり方を実現し、社会に変革を起こしていきます。こういった変化は不動産業を根底から様変わりさせる可能性もあると思います。
 6月号の「時代を読む」でもお伝えしたことでもありますが、当社としてはこの好況が終わったとき、つまりは冬がきたときのための備えを始めています。次の「まさか」への準備、そしてその時にめぐってくるチャンスを得るための備えです。
 2020年の東京オリンピックまでは大丈夫、という声も多く聞きます。しかし、何が引き金になるかは誰もわかりませんので、「まさか」が明日起こる可能性だって否定できません。今は中国情勢、ギリシャ情勢、消費税増税が、「まさか」の不況が起こるターニングポイントになるのではないかと考えています。この3つが同時に動きだし、最悪の場合、リーマンショック以上の不況になる可能性すらあると思います。
 不動産業は市況に左右される幅が大きいので、リスクが大きい事業だと思われがちですが、市況の波を読み、不動産の価格が下がったタイミングを活かして売買を行えば、安定した経営も十分可能です。そして、不況になったときでも「“まさか”に備える会社」であれば、生き残ることができるし、逆境を活かして成長するチャンスを得ることができると思います。世の中の「上り坂、下り坂、まさか」の「まさか」に備え、進化をつづけるエリアリンクを皆さんにお見せできるよう、今後も様々な取り組みを行ってまいります。参考になりましたら幸いです。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道