100年成長企業を目指して - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.192  2015年 12月号

100年成長企業を目指して

今回は「100年成長企業を目指して」というテーマでお話しいたします。
  ここ数年、秋は紅葉を楽しむため、週末を京都で過ごすことが多くなりました。京都は本当に素晴らしい都市で、神社仏閣の四季折々の美しい風景はもちろんのこと、料理や街並みにも奥深い魅力を感じます。私も今まで様々な都市を訪れてきましたが、このような都市は他に類をみないと考えています。
 一方で京都は美しい街並みを守るために、建築物への規制が厳しい都市としても知られています。短期的にみると東京のようにどんどん開発した方が経済も活性化しますし、商業都市としての成長も期待できます。しかし、長期的にみると、京都らしさをとことん守っていく方が、30年後、50年後、100年後の都市の魅力を高めていくことになるのは明らかです。短期的なメリットではなく、長期的な視点を持った戦略を優先させていることの表れだと考えています。
 京都に象徴される文化を守っていこうとする姿勢は、日本人の良さにも通ずると思っています。合理性を追求していくとなおざりになるようなおもてなしの心や、きめ細やかなサービスは、日本人特有の誇るべき美点だと感じています。
 さて、最近のマンション傾斜問題や家電メーカーの不適切な会計処理などの大手企業の不祥事のニュースをみて、経営者として心を痛めています。これは短期的な数字至上主義への傾倒がひずみを生み、引き起こした事件だといえるでしょう。極端にいえば、「稼ぐためにはズルいことをしてもいい」という姿勢の現れのようにも感じられます。グローバル化が叫ばれて久しいですが、利益至上主義に走ったあまり、起こるべくして起こった事件であると思うのです。顕在化している事件は氷山の一角で、まだまだ根の深い問題だと捉えています。
 私はグローバル化の悪い側面だけが、日本で広まっているように感じています。利益や効率を重視するあまり、現場や下請けの中小零細企業へのプレッシャーは強まるばかりで、疲弊していく姿が容易に想像できます。唯一の救いがあるとすれば、ネットの普及で、誰もが情報発信者になれるという点だと思います。良心ある従業員からそういった内部告発がなされることは、事なかれ主義の日本において大きな前進です。
 事業を継続するために利益を上げ続けることは、もちろん、重要なことです。しかし、それ以上に重要なのは、末永く事業を継続していくことだと思います。短期的な利益だけではなく、将来的な成長を視野に入れた経営こそが、50年、100年と愛される企業を生みます。そして、日本企業においては、日本人ならではの美点であるおもてなしの心やきめ細やかなサービスが不可欠でしょう。私たちが展開するハローストレージでも、セルフストレージ先進国であるアメリカの良い点を取り入れつつも、日本人のきめ細やかさを忘れずに、世界一のサービスを提供していきたいと常々考えています。
 海外のホテルでは、日本人のお客さんが嫌われることもあるそうです。部屋に小さなゴミが落ちていたとしても、日本人は気づいてしまうからです。現地で「そのぐらいいいじゃないか」といわれるくらいの不備であっても、日本の高いサービスのレベルで鍛えられた日本人の目はごまかされないのです。笑い話にも思えますが、これは日本人の特徴がよく表れた話だと感じます。
 こういった話からも分かるように、海外の方からみると、日本人の特性はきめ細やかさであるといえます。アメリカ発祥のセブンイレブンは、日本の経営陣の見事な采配で、本国アメリカにはない物流システムや商品構成で独自の進化を遂げ、ついにはアメリカのセブンイレブンを傘下に収めるほどに成長していますし、「コンビニ」は今や世界に輸出できるような立派なサービスに成長しています。日本人の良さを活かした経営戦略とはどんなものなのか。今一度考え直す分岐点に立っているように感じます。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道