今後の不動産業界と対策 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.99  2008年 03月号

今後の不動産業界と対策

 今回は「今後の不動産業界と対策」というテーマでお話します。                        前回、前々回と、不動産業界の事に触れておりますが、大変動きの激しい状況になっておりますので、ここ1、2年でどのように変わっていくかを、特報という形でお伝えします。

 金融業界は不動産の転売に対して特に厳しく、基本的には停止したような動きになってきています。不動産売買、分譲を中心に利益を上げている会社は、資金不足で動きがとれなくなっています。つまり、不動産の流動性が低下しており、少なくとも3月末頃まではこの状況が続くであろうと考えています。物が売れない状況になりますから、秋刀魚がたくさん取れれば安くなるのと同じで、不動産価格も下がっていきます。手持ちの物件も、購入金額割れでしか売れない状況になり、債務返済不能になり、運営できなくなります。売上が上がらなくとも、固定費は毎月かかるため、赤字転落の会社が出てくると思います。

 今後、思い切った安値の売買物件が出回り、サービサーが活躍するようになります。金融機関交渉などもあり、立ち直るまでには時間がかかります。バブル崩壊と同じとまでは言いませんが、「不動産業界のバブル崩壊」といった状況になると思います。ファンド会社にとっても、不動産の売買が無ければ収益増が厳しいでしょうから、7、8割は厳しい状況になって、淘汰されていくと思います。

 そのような期間が続くために、業界再編が予想されます。大手不動産会社のように、家賃収入による経営や、管理特化型運営であれば問題はありません。ストック型(累積型)だけで食べていける会社が一番良いです。ところが、去年の秋までのように、不動産価格がどんどん上がっていく状況下では、1件当たりの利益が大きいですから、当社も売買にウエイトを置く傾向がありました。環境が変わった後は、厳しい状況を乗り切る為に、ストック型へ切り替える判断をしました。昨年の10月以降、購入予定の物件を買わない、不採算部門の精査、社内の無駄を削減するスリム化などを行い、利益の出ているうちに対策を取りました。当社には、高利回りの所有不動産、高収益サブリース事業がありますので、不動産の流動化が無くてもやっていける会社作りの為に、昨年中に手をうちました。ただ、このような事態にならないに越した事はないのですが、ストック型に切り替えてもきちんと利益を上げて成長していく体制の準備をしました。
 今は、流動化を捨てた数字を出すことが大事な時期であり、それを実現することが急務だと考えております。
流動化によって成長した姿を見られている方や、急成長を期待されている方には失礼な言い方になるかもしれませんが、この先、10年、20年、100年後も伸び続けられる会社を築きあげるためにも、この1、2年は流動化ゼロになるくらいの判断をしています。ただし、変化するスピードの速い時代ですから、全く流動化をやめてしまうのではなく、時代が変われば新しい方針を決めていきます。不動産の流動化が減ることによって売上や利益は大きく影響が出るかもしれませんが、確実な利益を上げて伸びていく会社を目指します。

 何度も申し上げますが、不動産業界が厳しくなり、生き残れる業者は少なくなります。ストック型経営は安定していますが、実行できる会社はほとんどないのが不動産業界なのです。結果として流動化がないと厳しく、追い詰められていく現実があります。ただし、それを乗り越えて落ち着いたときが、新たなビジネスのチャンスだと考えております。この状況下で生き残れた会社は、とんでもない会社になる可能性があります。ストック事業でやっていける会社に切り替えることは、簡単なことではありません。しかし、今が決断の時です。むしろ少し遅いくらいなのかもしれません。今できることを一日でも早くやるべきです。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道