銀行 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

  1. HOME
  2. >
  3. 時代を読む

VOL.107  2008年 11月号

銀行

 今回は「銀行」というテーマでお話します。

   前回の「光が見えた」というテーマに対して、多くの方からご意見、ご感想を頂きありがとうございます。これからが本当に大変になる時だというご意見は一理有り、私の認識も、今は最後の膿出しに入っており、その対象は我々不動産業から始まり、最終的には銀行にも波及すると思います。 

   現在、世界的に金融業界が危機的状況にあり、それが実体経済に徐々に波及することが予想されます。日本の金融機関は他国と比べても安全だと言われていますが、現実は、金融機関の不動産業界や建設業界に対する信用収縮が続き、査定も厳しくするという悪循環にあります。その信用収縮は我々の業界だけでなく、飲食やIT業界なども対象となっています。今、本当に安全というのは住宅ローンくらいで、それ以外の投資商品も含めて、掛目が厳しくなっていると感じます。そうなると、不動産、建設業界が下降に向かい、結果として金融機関も厳しい状況になるでしょう。ただ、そのような情勢が悪い時でも、3億円以内の利回り商品というのは比較的良く動いておりますから、資金力のあるところが生き残れるのだと考えています。  

   各社の不動産売買や流動化を見ると、短期借入の割合が多く、また、ノンリコースローンの償還の期限が迫っているという事情を含めると、この影響が今後大きく出るだろうと思います。そうなると、金融機関がバブル崩壊時並みのダメージを受ける可能性が十分あります。私はファンドバブルという表現をしておりますが、ファンドのノンリコースローンが焦げ付いていく可能性が十分あると考えております。ファンド、リートの物件が放出されるとまた不動産価格が決めづらくなります。それを現金で買えれば別ですが、ローンが組みづらい状況の中で、頭金が多く必要となり、流動化が進み難くなるという悪循環が発生します。  

   そうなると、売れない物をさらに売ろうとしますから、より不動産価格が下がり、底が見えなくなります。金融機関も融資条件を厳しくしなければならず、資金繰りがうまく行かない企業が増え、償還を求めても返済出来ずに、結果としてその弊害が全て金融機関に回ってきます。それが世界恐慌的な事態になってしまうと、あらゆる事が停止状態になり、悪い状況は長引く恐れがあります。その流れが来た時には底を打ちますが、なにしろ不動産の底打ち感が無いと銀行は活発に動けないと思います。その間はどうしても、建設や不動産は怖いので扱いたくない、融資はしたくないという動きは続くのではないでしょうか。 

  しかしながら、日本国内だけで見ると非常に厳しい状態ですが、世界から見れば日本は買い場だという判断をしています。世界全体が好景気の中であっても、日本の株価は目立って上昇してきませんでした。不動産も1年程前までは若干上昇しましたが、極端な上昇は無く、世界的に見れば暴落のリスクは少なく、安全性から考えると日本の株や不動産にお金が流れる傾向にあると考えています。例えば、最近シンガポールの政府系不動産会社が日本で不動産投資と運営事業に進出するというニュースがありましたが、世界のお金が日本に流れる兆候は見えています。私の読みでは、最初に株が反応し、その後に不動産価格が反応していくのだろうと思います。 

  ただ、今年中に日本にお金が流れてくる動きが無ければ本当に恐慌の可能性もあり得るでしょう。世界の株価、特に日本の株価上昇が顕著に現れなかった場合には、根はかなり深いです。むやみやたらに恐慌が起こると言うと混乱を招く恐れもありますから、あまり言及はいたしませんが、万が一に備えて恐慌対策というものを打っておかなければいけないだろうと考えています。その対策も様々な面から考えていますので、また別の機会にご説明できればと思います。

   これから様々な兆候が出はじめ、米国の大統領選の行方等が見えてくると今後の動きが掴めてくるでしょう。その間は、事業を大きく伸ばすという事ではなく、生き残るということを最大のテーマとして行動する事が重要だと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道