恐慌対策 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.108  2008年 12月号

恐慌対策

   今回は「恐慌対策」というテーマでお話します。

   全世界的な不況の呈を成す中、恐慌の可能性に対して去年の秋口から私たちが取ってきた対策の説明をしたいと思います。今回の「時代を読む」は緊急報告といった意味でお話します。
   不動産の流れの変化を感じたのは、去年の9月でした。いち早くその状況の悪化への対策として、購入契約をしている物件を取り止めたり、不採算部門を切ったりと、コスト削減を進めてきました。まず、第1弾として去年の12月末までに一気に整理をつけ、ストック経営に全部切り替えるように方向転換しました。それについては、決算発表で報告しておりますが、かなり大胆に行いました。人員の異動も行い、社内体制も大きく変えました。

  今年に入り、上期を過ぎた頃から、実際に金融機関の流れの変化を感じました。去年の秋口から、状況が変わる度に金融機関に説明に行きましたが、世の中の状況が激変する前は当然、『何を言っているんだ』と思われた方も多かったと思います。時が経つにつれて、私が説明したことが現実のものとなりました。このような状況が続くと、金融機関も信用収縮をせざるを得なくなり、新規融資・借り換えがかなり難しい状況になります。それが続けば逆に倒産が増え、更に貸出しが出来難くなるという説明も事前にしてきました。

  10月に入る頃には、本当に恐慌があり得ると感じました。金融機関からの融資が全く無くなることを想定し、売却による実現損を出してでも現金を回収する方法を取るという判断をしました。それから、短期借入に関しても、不動産の処分と返済も一気に進めておこうと、多少の赤字は出ても売れる値段で売り、短期借入の返済をしました。比較的、利回りが高い物件が多かったことと、立地条件も良かったこともあり、ある程度処理が出来ました。膿という言葉はあまり使いたくないのですが、完全に膿み出しが出来たと思います。現状では、金融機関はなかなか15年ローンを組みませんから、5年、7年、長くても10年ですと、それだけで不動産を継続保有することがキャッシュフロー上、難しい状況にあります。これまでは高利回りの物件を保有していこうと思いましたが、不動産業界はリースも含めて、資金調達が厳しい状況にあり、そういう判断をせざるを得ない時代になっております。金融機関は、本部判断で決定し、統括していく形態になってきた為、統率を取る為には業態別に極端な判断をせざるを得なかったのだと思います。やはり、金融機関も自分自身が生き残らなればいけないという状況にあるのだと考えています。

   どんな状況下に立たされても自分で道を見つけなければいけませんから、金融がストップしても耐えられる体制を作っておく必要があります。私どもは現金を集め、ストック型のビジネスを積み上げてきておりますので、金融機関も友好的で色々とご相談に乗って頂いております。重要なのはキャッシュフローを改善すること、物件毎に収支を見直して処分するという判断をしています。

   来期、2009年1月から完全にストックのみでキャッシュフロー改善、経常利益も積み上がる方式に向かっております。ただ、現金残高がある程度確保出来ていないと、この先何が起こるかわからない為、大量新規出店による急拡大を止め、稼働率を上げて利益率を上げていきます。最悪、大恐慌という事態にまでになると、ストック事業において滞納の増加、ホテル経営のテナントの減少、家賃の暴落という問題も起こると思います。常に最悪を考えて準備をしていますので、今、多額の現金を使うことは得策ではありません。今後の出店は多少控えながら、現場の整備、収益の悪い物件の撤退も視野に入れ、足元をきっちり固めて2009年に向かっています。

  会社が存続するという意味で言えば、キャッシュフローが改善され、現金残高があれば何も恐れるものは無くなります。この先も、厳しい状況が想定されますが、当社がやってきた事が正しいかどうかは、投資家や一般の方が判断することですが、1年超の長きに渡ってやってきた事が、2009年1月のスタート時点でわかると考えています。なかなか数字ではお見せ出来ないのが残念ですが、やっとここまで整理出来たと思います。これだけの世界同時不況、それは世界同時恐慌まで行くのか、はっきりとはわかりませんが、予断は許されない状況にあることは間違いありません。投資家の方々はもちろん、今までお世話になっているお客様やオーナー様にとっても本当に素晴らしい会社、そして社員にとっても素晴らしい会社にするため、新しいスタートを切ります。事務所も移転して心機一転、地に足の付いた、本当の意味で本音を言い合え、気取らない会社にしたいと思います。こういう厳しい機会を与えられたことが、ある意味当社の転機となると考えております。社長指示型から社員が自分自身で行動できる会社に切り替える時ですし、社員一人一人がコスト意識を持ち、経営感覚を持った会社に生まれ変わる機会を与えてくれたのだと思います。色々なご意見があるでしょうが、私たちは世の中に必要で、更にお役に立てるような会社を目指していきます。

   この不況で資本主義の在り方、金儲け主義が問われたのだと思います。ここで皆が目覚めないといけない!という声が聞こえるような気がします。気を引き締めて、よりよい会社となるよう謙虚に、また地道に頑張っていきますので、これからも宜しくお願いしたいと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道