経営理念の重要性 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.73  2006年 01月号

経営理念の重要性

新しい時代を迎えるにあたり、経営者の方々もじっくりと考える時間がおありでしょうから、今回は、経営理念及び社会貢献の話を中心にしたいと思っております。何故今このような話かというと、お恥ずかしい話ですが、私どもの本当の経営理念というものがやっと出来上がったということなのです。今までにも、それなりのものはあったのですが、本当の意味での経営理念というのは、経営者が心の底からどんな事をしたいのか、世の中にどんな形で貢献したいのか、どんな形でお役に立ちたいのか、自分の生まれ育ち、経験というところからを含め、自分自身の魂が何を求めていたか、どういうことを目指してきたのか、どういう使命を持って生まれたのかという位まで掘り下げていかなければ、できないのではないかと思います。

 例えば、本当に純粋な気持ちで松下幸之助さんの水道哲学のように、電気製品を水道の水のように提供してあげたいという純粋な気持ちだったり、あるいは、本田宗一郎さんのような、日本の車を世界一にしたいなどと、本当に心底純粋に思った心の叫びというものが必要だと思います。私の場合は商売として、こういうことをやると儲かるのでは、こういうことをやると人々は買うのではないかなど、ある意味、便利なもの、世の中に必要なものを提供すればそれで良いのではないか、というようなくらいだったと思います。別の言い方をすると、私の中では、経営理念というよりも営業理念的なところで今まできてしまったのかもしれません。

 それが故に、私自身が考えに考えぬいて、この半年間苦しみに苦しみぬいてやっと出た言葉は、「世の中に便利さと楽しさと感動を提供する」というものです。それをお客様、社員、企業という切り口でとらえると、「お客様第一主義」「社員の物心の成長」そして「百年成長企業」という表現になります。私がここで気がついたことは、要するに、便利さという意味で追及してきたことは事実ですし、楽しさや感動という点ではある意味センスを含めて多少はあったと思います。しかし、経営理念という形で、企業が向かっていく上での羅針盤であり磁石であったり、そういうものを社員に示すことができていませんでした。それが故に、私が方針を出したときに、私についてくればいいというだけで事が進んでいったというところが、事実あると思います。ただ、現在の規模の企業になってきますと、各自がそういう羅針盤・磁石を持ち、自らの地図を描きながら、自ら目的地に向かうということが行われなければ当然その企業は伸びていかないでしょうし、私の力が衰えたときには伸びが止まってしまいます。

 経営理念ができたことで、私どもは毎週各分野の社員と、どんなビジョンを描くのか、それが経営理念に基づいているのか、という内容のミーティングをし始めております。これによって、社員達に経営理念というものが血肉になり、それに基づいて段々と肉付けが始まっていき、その中で社員は自らの力を発揮できるのではないかと考えています。もう一つは、そのことで、社員が上を見ていくのではなく、お客様やお客様を見ている部下を見ていく、つまり方向・ベクトルが変わることで、もっともっとお客様の満足行くサービス、お客様の本当に納得いくサービス、そして感動を与えられるサービスまでできるようになっていくと思います。

 それから私は、便利さ・楽しさ・感動という言葉で皆さんに貢献できるような企業でありたいと思っております。寄付であるとかそういうことも当然しておりますが、そうではなく、やっていること自体が社会のためになっているのかどうか、それ自体が本当に社会のお役に立っているのかということです。それに基づいていくことで、もっともっと会社は伸びていくだろうし、社員ももっともっと成長していくだろうし、もっともっとお客様の支持も得られていくと考えております。

 生意気ですが、経営理念というものは、経営者はどんな人間なのか、自分はどんな事をした時に満足するのか、どんな事をした時にどんな事をしてあげたいのか、そういった自分の生まれ育ってきたところを全部振り返って見つけ出すものなので、すごく大変なことだと思います。ただし、それをしておかないと一代限り、あるいは、いつも社員がぶれる、よく方針がずれる、つまり磁石や羅針盤のない航海、その場限りの経営というのをやりかねないと私は思います。それは難しい言葉ではなくてもよいと思います。これだ、という言葉を見つけ出すことが経営者にとって非常に重要なのではないでしょうか。今回は自分の恥ずかしさをお話しする形になりましたが、かなり遠まわりした中で、本当に私の中で腑に落ち、すっきりして経営ができ始めていると思います。特に世の中が好景気になる気配のある中、二極化も進んでいる中で、非常に舵取りが厳しい時代がきていると思います。しかし舵取り、羅針盤がしっかりしていれば、無事に航海をぬけて大海原に行ける、そして、新しい時代の中にも対応できると自負しております。生意気な意見を何度も言いましたが、是非考えていただく、また、すでにできておられる方はそれに徹していただくということをお願いしたいと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道