3年が勝負 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.78  2006年 06月号

3年が勝負

先日、神田昌典先生監訳の「バブル再来」という本を読みました。今回はそれについて考えたことをお話しします。過去・現在の経済、人口、所得、投資を含めてかなりのデータ分析をしており、説得力があり、大変共感するところの多い本でした。結構厚い本ですが、さんにおすすめできる内容でした。

 端的に申しますと、2009年末にはこの景気上昇は終わると書かれています。場合によっては、それまでの期間が最後のチャンスになるという内容でした。ただしこれはアメリカでの話ですから、日本の状況と全く一緒と言っていいかどうかはまた別問題ですが、将来的には東南アジアの時代が来るという表現で終わっています。

 この本を読んで一番お伝えしたいと思ったことは、不動産に関してはそれ程極端に上昇していく事は無いのですが、ある程度までは伸びるだろうという事と、株価については大変な勢いで伸びて行くだろうという点です。その後はこういう好景気は無いという表現をしており、2009年から2012年には非常に厳しい状況が来る。その際に、どのような分野が伸びていくのかという事も書いてあります。

 今の世の中がどのように変わっていくかというと、当然、二極化という表現もされているのですが、現実的には、年収の高い層の比率が上がっていく。要するに、1、000万、1、500万円以上の収入を得ているような人達、「ボボス」(BOBOS…アメリカの新富裕層を指す。ブルジョワ・ボヘミアンズを縮めた造語)と言っておりますが、そういう高収入層の方たちが大体2割ぐらいまで達する。金融で活躍している人など、優秀な人達はどんどん収入が上がり、それに見合った消費をしていくのですが、俗に言う富裕層と呼ばれる人達が何をやるのかという事が、今後事業を捉えるマーケットになっていくわけです。

 ヘルスケア分野なども相当伸びていくでしょうし、そういった意味で事業を見ていくと、我々は何を考えていけばいいのかという事が徐々に見えていきます。まず第一に私が考えたのは「3年が勝負」ということです。この3年間に確固たる基盤を作っておくこと。今後バブルの崩壊のような事や、下手をすれば、1929年の世界大恐慌に近い事が起こってもおかしくないでしょう。そういう事が起きたとしても、今の事業でそのまま横ばいになるもの、ダウンするもの、半分になるもの、その後も伸びるもの、そういった事を事前にチェックし整理しておく必要があります。各分野でその後も伸びる事業を作り上げていくのか、今あるものを維持していくのか、そういう考えを組み立てていかないとダメだと思います。

 それから、ある程度の現金の蓄えが必要になると思います。自社でどれだけ蓄えておけるか、資金力がどれだけあるかが重要になります。そういう意味では日本は今から15年程前にバブルの崩壊を経験していますから、そのとき何が起きたのかをもう一度考え直す。あるいは、その経験の無い人達はもっと慎重に過去の事実、アメリカで起きたことも含めて、分析して先ほど述べましたように準備に入らなければいけない時期に入ったと思います。そういう意味では非常に大事な3年間であり、今回の題材としました。

 「景気が悪くなります」、「このまま好景気が続きます」など、色々な意見が交錯していますが、景気もずっといいという事も、ずっと悪いという事もないはずです。やはり上昇、下降といった色々な波を繰り返し越えていくわけですが、今後大きなトレンドで言えば人が増えていく東南アジアというマーケットが、色々な意味でビジネスになっていく。ただし、東南アジアがビジネスになるからといって、焦って投資していいかというとそう簡単なものではないですし、当然段階があると思います。色々な情報を集めながら2009年から2012年の厳しい状況でもある程度維持ができる、ある程度備蓄によってそういう時期でも伸びるもの、もっと前向きに考えて、その時期が過ぎた頃にやっと東南アジアの時代ということが見えてくると思います。

 中国やインドが注目され、今、東南アジアと言っても当たり前ではと思われるかもしれませんが、そうではなく、それ以外の国が出てくるような気がしております。そういう国と今から友好関係を持っておく、情報網を持っておく、あるいはそういう国でのボランティアなど、色々な手を打っておくこともできます。そういう意味ではこれからの時代に備えた経営手腕が必要になっていくと思います。

 現実に起こる、起こらないということはあるかもしれませんが、私自身にとっては非常に納得のいく本でした。ただし、実際に読んで「あ、そうか」だけでは意味の無いことですから、より具体的に考えて、行動に落として、やりきって、準備をしておくということにこしたことは無いでしょう。ですから、2009年から厳しい状況になるということであれば2008年までに準備を終えていなければいけない、時間として2年半というとても短い時間しかない現実を考えておくことが必要です。

 バブル崩壊を経験していない若い人達が代表されている企業も多くなってきました。さらに慎重に色々なことを考え、高望みする気持ちを抑えながら、是非頑張っていただきたいです。不動産業界も含めて、2代目3代目の方が携わっている企業も多いのですが、自分達を戒める意味でも、是非、機会があれば本も読んで自分で色々考えてみて、実際の行動に落としていただきたいと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道