強気と弱気 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.112  2009年 04月号

強気と弱気

   今回は「強気と弱気」というテーマでお話します。 

  今回の世界的な恐慌と前回のバブル崩壊との大きな違いは、一言で言うとスピード感です。当然、対応も早くなければいけない、という印象が強いです。 

 このような状況の中で強気な意見を述べさせて頂きますと、まずアメリカが先陣を切って不況対策を一気に行えば、当然、日本も景気対策を打たざるを得ない。そうすると結果的に、底打ち感が早い時期に強く出ます。そのような傾向は既に一部に表れており、株や不動産の価格が下落している中で、実際は低価格帯の住宅や投資物件の中で、3億円以下の物件が、値頃感から売れております。 

 私の感覚では、世の中には将来を憂う人たちが多い。老後を心配している方々が、不動産が下がって来た中で投資利回り商品に興味を持ち出すのは自然の流れだと思います。その中で現金を持っている方が、そろそろ不動産を探し始めようかなということで不動産会社等に声を掛けてみたら、意外と品薄です。但し、買う時には必ず差し値を入れますから、それでも成約が増えているという事は、潜在的に買う力が強いという事になります。つまり、3億円以内の利回り商品は、底打ち感が強いという事だと思います。 

 また、最近、新築で売っていた物件の売れ残りを、別の会社が買い、それを割安で再販するアウトレットマンションがあり、それも非常に売れています。これはどういう心理かというと、自分達が住んでいるマンションやアパートの家賃と比較して、支払い額が下がるので余裕が出来、更に部屋は広くなって住環境も良くなると考えます。そうなると、当然買います。そういう意味では基準が昨年と変わって来たのだと思います。 

 更に、もう一つの見方としては、路線価に注目しています。今回、下がる可能性もありますが、不動産が路線価以下の価格で常に流通していくことは基本的には考え難いですが、現実的に高価格帯の物件は今も売れていません。つまり、低価格帯の物件には底打ち感がありますが、高価格帯の物件等は底打ち感が無いのが現実です。 

 恐らくこうした現象は、株の世界でも起こり得ると私は思っています。特に建設、不動産業の株価は惨々たるものですが、その中で見直される会社が出て来ると思います。それは四半期毎の決算を見て判断出来ます。現状では、潰れる潰れないというレベルにまで株価が下がってしまっている会社もありますから、市場全体の株価の動きから見ても、特に建設、不動産の株価は下がり過ぎたと言えます。このような状況下で不動産株に底打ち感が出た時には、反転は早いのではないかと思います。 

 一方、弱気な話をしますと、前回の世界恐慌では、一旦下げ止まって、また上がり始めて、後はだらだらと長く下がったという歴史がありますから、今回もそれが起こる可能性は十分あります。その場合は、アメリカや日本が世界全体で対策を打っていくにも関わらず、底抜け感の出る可能性があります。 

 私の穿った見方かもしれませんが、世界中の金持ちが日本や世界を見た時に、底が抜けるということは基本的に皆が止めようとするのではないでしょうか。凄いお金を持っている人達というのは、自分達が資産を沢山持っているわけですから、底が抜ける事を一番恐れているのではないかと思います。そう考えると、何とか世界経済を支えきれるような政策が出て来て、この不況が止まるのかもしれませんが、もっと悲観的に見れば、底が抜けてとことん悪い状況になるという、非常に考え難いけれども、全く有り得ないとは言えない状況も視野に入れておかなければなりません。 

 そういう中で我々がどういう手を打っていくかというと、財務体質を良くした上でのキャッシュフロー経営です。つまり月々のキャッシュフローをプラスにしている会社が強いです。そうすると、明らかに世の中の潮目が変わった時がはっきり分かります。しかし、打つ手無しの状況にまでなってしまった会社も世の中には沢山あります。資本主義の中で淘汰される事は仕方がない事だと思いますし、今回のように変化のスピードが早く、百年に一度の不況と言われている時に手を打てと言っても、準備不足のところは沢山あります。それに対して手を打ち切れたのは、本当に凄い事だったと思います。手を打ち尽くしてこの不況を乗り切れたところが、恐らく今後大きな繁栄に繋がっていきます。 

 ただし、日本に関して言えば、人口減少に高齢化が進むという事を考えると、今後大きく成長する国には成り難いのではないでしょうか。アメリカの様に国外から移民を沢山受け入れる政策が出来れば話は別ですが、それまでは高度成長というのは望めないので、冷静に対処すべきだと思います。 

 今は必死になって生き残りをかけて努力されている人が沢山います。苦しい状況ですが今を乗り切ると、これが結果的に会社の体質を良くし、財務体質も改善され、また良いスタートが切れる準備に入ると考えたいと思います。今は、今後の考え方というものが少しずつまとめられる時期に来たのかも知れません。 

 ただ、生き残る為には正攻法でやって行く事が大事です。会社の意識、社員の意識を変えて、組織もしっかりさせ、教育も行い、新時代に合った価値観を身につけるには非常に良い時期ではないかと思っています。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道