先送りの国、日本 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.62  2005年 02月号

先送りの国、日本

今回は、2005年の具体的な方針を出すにあたり、まず今の日本の状況についてお話ししたいと思います。

 日本という国は、先送りの国だと思います。現実に債務についても、将来に大変な課題が残っていて、30兆円の国債を発行していますが、これは国家予算の40%弱を借金でまかなっているということです。このまま行くと厳しいということは当然わかりますし、つい1年ほど前までは、国家破産とか預金封鎖とかいう事がいわれましたが、最近はききません。結局日本という国のあり方というのは、結果的に先送りにしていく事が多いといえるわけです。ですから、このまま消費税を上げる等の増税をして、様々に形を変えながら、こちらは安くしたがあちらを上げて、という風にごまかしながら走っていき、だんだん国の体力を失っていく、という事もあり得るわけです。その反面、急に国がおかしくなるとか、突然クラッシュするとか、急激に何かが起こるなどという事はまずないだろうと考えられているわけです。

 このままずるずる行って、もちろんいい結果が出る可能性もあるのですが、その間は基本的に持ちこたえる事になると思います。すなわち、極端な変化は起こりにくいという事で、しばらくの間ここ1年程度は何とかやっていけるなという雰囲気があります。ですから、今、2005年を考えると、不動産に関しては、売り物が無くなってきているといえます。かといって、不動産が全て上がってきているかというと、上がる物件と、上がらない物件が、はっきり分かれてきています。ですから、この1年というのはある意味で安全な路線で行くだろうと予測しています。

 ただし、売り物が無いので、商売ができないという予感はしています。ですから、これはよくお話しするのですが、例えば不動産業で言えば、地域を知っているという強み、その力を使って、あらゆる分野でのサブリース業に徹底した方がいいと考えています。例えば、倉庫を借上げて倉庫として貸す、同様に店舗・土地等、アパート・マンションにこだわらないで、あらゆる不動産を借り上げて貸していくというやり方です。

 私共も、サブリースに関してハローネットワークという企画を準備しておりますが、例えば事務所を借り上げてトランクルームやSOHO等、様々な付加価値を付けて転貸をしていく、そういうビジネスを取り込んだ会社は、非常に安定した経営ができると考えています。また、底地等、権利関係が複雑になったものを整理することにより、そこにもビジネスチャンスがあると思います。

 今は、だれでもできることをやる、というビジネスでは駄目だと思います。当社だからできる、当社のノウハウ、交渉力をもってすればできる、という事が非常に重要な時期にきていると思います。いうなれば、今までは、おおよそ平均値のものであれば合格点という流れだったのですが、これからは、優秀な人と、駄目な人とが大きく分かれていく、いい悪いは別にして、アメリカの様に優秀な人はどんどん収入が増えて、駄目な人はもっと下がっていく、貧富の差がますますつく世の中にならざるを得ない兆候があります。

 その流れでは、あらゆる業種に全部格差がついてきますから、弁護士・医者等の世界においても格差がついてくると思います。要するにこれからは、能力差によって、収入が全く変わってしまう。例えば、毎年3千名の弁護士が誕生するようになると、必然的に差が目立ってくる。さらに、人口は減っていくのですから、お客様の取合いが始まるということです。ですから、実力がなければ、収入は得られないという所まで来ているという事です。

 不動産業においては、自分たちにしかない、ノウハウ・交渉力を持ちながら、地域を誰よりもよく知りながら、という形でのビジネス展開になっていくと思います。これは、大手であれば、また違った展開ができると思うのですが、大資本で一気にやっていくところ、地域でしっかりとやって行くところ、に分かれていくとも思います。

 その意味で、この1年は、大転換していく、考え方を全く変えていく、という期間だと思います。ですから、よく言うのですが、20世紀は押し売りの時代、これからは、お客様が何に困っているのだろうというところから、アイデアを出し、品物を出し、サービスを出し、どのようにお役に立つかという、あくまでも、相手方、あるいは相手方のもっている不動産に対して、何をしてあげられるか、不動産に関するいわば総合医療のような形が求められてくると考えています。

 今までは、なんとなく平均値重視で、資本主義といいながらもそんなに格差がつきませんでしたが、これからは本当の意味で、資本主義がいいかどうかは別として、実力次第ではっきりと収入が決まる時代になったのです。ある意味、まともな時代になってきたと思います。これがいい事かどうかは、まだ分かりません。人の和、日本の良さでもある部分を殺していってしまうこともあるでしょうし、嘆かわしい事に、日本の良さも消え去りつつあるかもしれません。ただし、逆にそこに気がついて、日本の良さを世界に売り込もうとしている人たちも増えているわけです。

 つい最近アメリカへ行ってきたのですが、日本食も、非常にレベルが上がってきていると感じました。今までは、海外での日本食というのは、総じてレベルが低い事が多かったのですが、最近は、本物の日本料理が増えてきており、非常に人気があります。なぜかというと、舌の感覚、味に対する感覚に、日本人は敏感で、海外に比べてもかなりのレベルだと思います。それに加えてサービスですが、チップを貰わなくても、自然とサービスができるという資質を持っている、それから清潔感も持っている。これは非常に売りだと思います。こういうところに全てのヒントがあるように思います。日本でビジネスをやるにも、清掃の徹底や、サービスの徹底、基本的には、お客様に何が出来るかというところからのスタートだと思います。

 海外にもヘッジしておかないと厳しい時代がきているといえますが、海外にはチャンスもあれば、その分リスクもあり、政治が変われば、やり方も違います。例えば、中国には伸びている分チャンスが多いですが、まだまだ分からないところもたくさんあります。アメリカもやはりすごいと思っています。アメリカは、人口問題にしても食料・資源にしても、戦略がしっかりしていると思います。資源は自分たちの領土内にあるのに掘らず、人口も移民対策をしながらも、増えていく方策をとっている、治安の問題等、いろいろあるにしても、経済がしっかりしていて、将来の対策もしっかり取れている国はアメリカしかないと思っています。そういう意味では、戦略的に国を繁栄させていくシステムがあります。日本は戦略のないまま、先送り先送りにして行くことが多いですから、このままでは将来は厳しいと思っています。その厳しい中で我々も生きていかなければいけないですから、地の利を活かした、新しい形の不動産業、新しい形のビジネスをやらなければいけない時代にきていると思うのです。

 変化のスピードについて一つの例を挙げますと、ある地方で、半年前には平均して15%回っていたものが、今では、10%回るものがなくなってしまっていたり、都心の不動産では、ワンルームマンション用地等は、物によっては1.5倍程度上昇しています。こういったスピードでお金が動くものですから、不動産もあっと言う間に変化しています。これは、全部ではなく一部ですが、このような勢いで環境が変わっていきますから、ある意味で売買で瞬間的に儲けられても、それ以外は厳しい、であれば、地域に根付いたビジネスに切り替えるのも一つの手だと思います。

 ここで、マーケティングをもう一度やらないと、ものは見えないと思います。不動産は、利が回るものに関しては、どんどん無くなっていくので、大変厳しい時代を迎えると思いますから、商売がしづらくなることも事実です。ですから、早いうちに、業態を変えていく必要があると思うのです。私どももそういうモデルを作っていきますが、地域に役立つというテーマを、ぜひもう一度考えていっていただければと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道