今後の不動産の動き - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.80  2006年 08月号

今後の不動産の動き

今回は今後の不動産の動きというテーマでお話しします。不動産業界がこれからどうなっていくかといいますと、ファンドやリート関係の会社が不動産の流動化を狙って、売却の動きが出てくるのではないかと考えています。ただ、売却するにしても利益を出そうと考えますからそれほど安い値段ではなく、むしろ高値で売却に出される物件が多いと思います。その中で売れる物件もあるでしょうが、管理費、修繕費等を除いた利回りが4%、5%程度しかなく、なかなか売れない物件も出てくるのではないでしょうか。売却される物件の数も増えてきますから、当然、競争が始まって時間が経つにつれて売れにくくなる。早い段階で見切りをつけて値段を下げれば早く売却できますが、そう簡単に下げることはできないでしょうから、長い間売れ残った挙句、気がついてみたら相場が下がっていたというようなことも起こり得ます。

 ファンドが買ったものがこれから都心、地方も含めて各地で出始めてきます。そのような不動産もやはり、当初の設定価格を簡単に崩せないために、空室が膨大に増えていくだろうと思います。空室の期間が長くなり、1年ほど経ってこれではいけないということになって、極端に価格を下げて埋めていく。そうなると、今後の賃貸相場を崩すことにもなりかねません。

 見方によっては、需要と供給のバランスを崩すほど急激にたくさん作ってしまった為に、住居系、特にワンルームマンションなどは、値段の調整が始まり、不動産の流通が抑えられていくような気がします。不動産を金融化したことによって、適正規模を超えて供給してきた事のしわ寄せが大きく出てくるでしょう。

 また、総量規制があったことで、金融機関が不動産業界でも貸す相手を選び始めて、市場に急激に変化が見られるのではないかと思います。金利の自由化も含めて、ある会社には低い金利で資金を貸し出すが、別の会社には高い金利で貸す、あるいはこの会社には貸さないといった具合に、不動産業界の大きな変化の年が、今年の終わりから来年にかけて起こってくるのではないでしょうか。

 そのような中で、やはり、誰でも欲しがるような物件は、高く、手に入りづらくなってきていますし、高い物を買うと、金利が上がった時に事業性が厳しくなるでしょう。不動産を取得する際に、取得価格に対して融資を受けられる割合が以前は7、8割と高かったのに対し、現在では5割程度になってしまっています。そのことを考えると不動産価格の高騰は止まり、下落もありえると思います。

 そのような状況を乗り越えていく為に、今後の不動産業界において必要な事は何かといいますと、権利関係が複雑な不動産であるとか、問題を抱えている不動産の再生事業といった不動産を整理するようなプロになる事だと考えています。コンサルという言葉が頻繁に使われておりますが、本当の意味でどんな状況をも解決できる力があれば、安い不動産を買って付加価値を与えていいものに仕上げるといった、本当に手間隙をかけたビジネスが構築される時代が来るような気がします。ですから、これからは本当のノウハウ、企画力、商品力、運用力といった分野が重要視されていくと考えております。

 そういう意味では本当の不動産業、不動産業界とはどうあるべきかということも問われますし、ファンドも金融の仕組みだけでなく不動産を本当に理解する事が必要でしょう。これまでの数年間、不動産価格が上がる前提で成り立ったビジネスが、これからは上がらない、あるいは下がることを視野に入れてビジネスが成り立つような方法を考えなければなりません。それには、先ほど言った企画力、商品力、運用力に特化した会社がまた次の時代を凌駕できるのではないかと思います。

 ファンド、リートはある程度の規模を持ち、いい物件も多く買えていますので、全てが悪いというわけではありません。ただ、大きくなる会社と、あまり伸びきらない会社に二分されて、今後その差が大きくなっていくのではないでしょうか。これも、今、日本で起きている事が全て二極化して、勝ち組・負け組などと騒がれていることの影響だと思います。ですから、本当は勝ち負けといった単純な言葉ではなく、やはり他には無いノウハウ、特徴、強みを持っている、オンリーワン的な要素を含んだ、企画力、商品力、運用力を持った会社が残れる時代になっているのではないでしょうか。

 この不動産の流れがまた景気に水を指す事がない事を望みますが、今年から来年に掛けて世の中が大きく変化して、全てにおいて色々な変化が現れていくと感じます。ですから、今のうちに足元を見た、本当に必要な会社、世の中に絶対なくてはならない会社にならなければいけません。もっともっと謙虚に世の中のお役に立てるという会社作りが重要だと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道