後片付けの時代 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.195  2016年 03月号

後片付けの時代

今回は「後片付けの時代」というテーマでお話しいたします。
  時代の変化とは実に激しいもので、変化の過程で時代から取り残されていくものがたくさんあります。不動産で例を挙げると、駅から離れた比較的小さな土地はそういったものの一つだと思います。以前であれば、ファミリーレストランやマンション、アパートなどで活用して収益を確保できたような土地でも、最近では、郊外の立地が店舗や住居に好まれない傾向があるので、従来の活用方法では運用が難しいケースが多くなっています。また、戦前、戦後と土地を購入する余裕のない人が多かった時代には、土地を借りて家を建てる人がたくさんいました。その慣習が、借地権のついた権利関係の複雑な土地、いわゆる底地を生み出し、現代でも相続する方、相続される方にとっての悩みの種となっています。東京都心を車で走れば、建築中の高層ビルをたくさん、目にすることができますが、その一方で、高度成長期に建てられたような中小型のビルもあり、それらは十分な収益を確保できず、建て替えもできないものであることも多いのです。
  アイデア次第ではありますが、時代の変化に取り残されたものには、新しいビジネスチャンスが秘められています。先に挙げたような例は、いずれも当社の手掛ける新しいビジネスを生み出してきました。駅から離れた土地にはレンタル収納スペースの「ハローストレージ」としての活用をご提案し、新たな価値を生み出していますし、当社で取得した底地についても、借地権者の方々の相続などのタイミングやご意向に沿えるように、権利関係を整理して売却しており、喜んでいただいています。また、新築のビルに競争力を奪われてしまったような中小型のビルでは「ハロー貸会議室」を運営しています。
  従来のリフォームといえば、水回りに少しだけ手を入れる、壁紙を張り替える、など小規模なものが主流でしたが、ここ10年ほどはテレビ番組でも大規模なリノベーションが特集されたり、中古不動産のイメージが変わってきているように思います。こういった流れは、中古不動産の価値の向上に繋がっていることでしょう。時代に取り残された不動産でもどうすれば改善できるのか、どうすれば時代にマッチするのか、想像力を働かせてみれば、新築・中古の垣根もなく、良い不動産は良い不動産として適正な価値を持つようになると思うのです。
  これから日本は、人口が減るというかつて経験したことのない新たな時代を迎えます。今まで十分に活用できていた不動産でも、収益を望めなくなったり、予期せぬ事態が起こる可能性が考えられます。そしてこういった局面では、従来の成功事例を忘れることが重要だと思います。皆がやっているから良い、皆と同じじゃないと不安、という心理はよく分かります。しかし、古いやり方から抜け出せないことが最大のリスクになると思うのです。
  とはいえ、世の中の新しい動きにすぐに飛びつくことも危険です。一時期、不動産業界からも参入が増えた高齢者住宅の事業を例に挙げると、介護保険制度が変わったタイミングで事業が存続できなくなったという話も聞きますし、今、注目されている民泊も、日本の国民性を考慮すると近隣住民の理解は得難いでしょうし、どこまで広がりを見せるのかはまだまだ不透明です。それよりは、これから顧みられなくなる可能性を持つ不動産にフォーカスし、リサイクルするように新しい付加価値を提供していくことを常に考えていきたいと思うのです。活用が困難な不動産であれば、リーズナブルに購入したり、借りることができ、しかもオーナーの皆様にも喜んでいただけます。一般的に時代遅れとされているような不動産かもしれませんが、後片付けをするように一つ一つ、丁寧に考え、新しい価値を付加していけば、新たなビジネスとして飛躍していく可能性を十分に秘めていると思います。時代の変化に追い付こうと過剰に反応するのではなく、従来あるものをどう活かしていけるのか、今一度、捉えなおすタイミングがきていると感じています。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道