最悪を考える - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.206  2017年 02月号

最悪を考える

最悪の事態に備え、日ごろから考えていることを心の準備も含め、お話したいと思います。
市況に関しては金利が低いことから、不動産の取引が活発です。しかし現状を見ると、手ごろな価格の商品は売りに出されれば動く状況ですが、億単位の高額商品は鈍化していると思います。その背景には「そこまでの大きな額は投資できない」、「将来的に何が起きるかわからないから、ローンを組んで物件を購入するリスクは避けたい」といった投資家の心理があると思います。
  私は、常々、5年、10年、20年後を考え、手を打っています。そういった本を絶えず読み、情報収集も欠かさぬようにしています。例えば、1929年の世界大恐慌後、米国の失業率は4年間で約3%から約25%まで増加しました。これは国民の4人に1人が失業している状態ですから、経済が未曾有の危機的状況であったといえるでしょう。まだ記憶に新しい2008年のリーマンショックのときですら、1929年の世界大恐慌の深刻さとは比べられないと思います。最悪のストーリーはこの世界大恐慌と並ぶほどの不況が来ることです。そんな時代には一体、どのように生き残っていくか、いつも考えています。
  不況がきたとき、全てのフローが一旦止まると予測しています。キャッシュフロー、経費、関係しているオーナーさんとの関係も含め、あらゆる意味でお金の流れが止まった場合、全てにおいて変化が起こることが予想されます。そのような不測の事態に備え、日ごろから準備を欠かしません。時には、お取引のある不動産オーナー様に協力してもらうこともあるかもしれません。大不況といった大きなリスクが発生した際には、人間関係が大切になりますから平時から協力を仰げるような関係を作ることが重要です。
  社員もやたらと増やすものではないと考えています。私は以前からこの「時代を読む」でもお伝えしてきたように、「最小の人数で最大の効果を上げるには?」という視点を重要視し、効率性や生産性の向上を念頭に置いた人材教育に力を入れています。正社員1人あたりの経常利益を一つの指標にしており、今は大体1人あたり2000万円ですが、1人の力を2倍、3倍にし、まずは5000万円を一つの目標と捉えています。ゆくゆくは1人当たりの経常利益を1億円まで伸ばせていけたらと思います。高い目標の達成に際し、最も重要なのは、外注先やスタッフに対し、丸投げではなく、的確に人を動かし、相手に結果を出させる力です。
  手掛けるビジネスの業容も重要です。不動産業界においては、不況になると、売買中心の企業は業績がすぐに厳しくなります。そういった不況時でも安定している業容はやはり、日々、収入が累積で積みあがるような不動産管理業や私たちのトランクルームなどの売買以外のストックビジネスの分野です。キャッシュフローが安定しており、多少の売買を手掛けていたとしても、ストックビジネスだけでも当面の資金を賄えるような盤石な事業構成を意識しています。
リーマンショック後、当社も厳しい時期がありましたが、お陰様で当社も2014年より実質的な無借金経営を続けています。しかし、不思議なもので、気が緩むとよからぬ変化が起こるものです。だからこそ、今の状況に満足せず、40年近く不動産業界に身を置くなかで経験したバブル崩壊、リーマンショックなど幾度かの不況を心に留め、経営に取り組んでいきたいと思います。
  どんな時代でも「まさか」というような出来事が起こるものです。自分の性格を分析すると心配性だという自覚もありますが、ただ心配しているだけではなく、先手を打って対策を講じておくこと重要だと考えています。社会が変化していくことは今までと同じやり方で儲かるビジネスが減るということです。どうコストとサービスのバランスをとり、お客様へ新しい価値を提供していけるか、必要とされるサービスを作り出せるか。常に最悪の時代を考えながら、先手を打った経営を心掛けて行きたいと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道