不動産市況 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.213  2017年 09月号

不動産市況

今回は「不動産市況」についてお話しいたします。私は、以前から夏明けに何か変化があるのでは、という話をしていました。過去を振り返っても、1990年代のバブル崩壊、2008年のリーマンショックも夏の終わりに発生しており、夏以降に潮目が変わることが多いと感じています。
 夏の終わりを迎えた今、選別融資が始まっています。具体的には、金融機関によるアパート融資があげられます。今まで金融機関は、積極的にアパート融資に取り組んでいました。しかし現実的には、日本国内の人口が減少する中で、アパートを造りすぎているという状況があります。つまり、需要より供給が上回っている状況なのです。従って空室が増え、ローンの支払いが難しくなるという事例が増えてきました。そのような事態を踏まえて、金融機関は徐々に融資判断を厳密に行うようになっていると思います。今までであれば、サラリーマン投資家であっても頭金ゼロでアパートローンを組むことができましたが、現在では頭金や金利、期間等の諸条件が付けられて、結局ローンを組めないということが起き始めているのです。一方で資産背景のしっかりとした人に対しては、融資が積極的に組まれています。平成29年8月21付の日本経済新聞では「アパート融資急減」との記事があり、2017年4月〜6月の個人向けアパートローンの新規貸出額が前年同期比15%減だったと報じられています。これは今後、不動産会社を含めた法人に対しての融資も選別が始まることを示唆しています。急に審査が厳しくなり、借入が出来ない、という現象が多くなるでしょう。私はオリンピックまでは現在の市況が何とか持つのではないか、という期待感を持っていましたが、現時点では深刻な状況となりつつあるのではないかと懸念しています。
 バブル崩壊やリーマンショックを経験して思うことは、非常に単純なことです。つまり倒産する人たちが増えて、そこから不動産の投げ売りが始まり、今買わなくてもよいという心理状態となり買い控えも起こる、それにより倒産する人がまた増えて、また投げ売りが始まることで人々の心理が冷えこんでいくのでは、と考えています。今回は、今までと違ってじわじわと潮目の流れが来て、じわじわと引いていく感じの波なので、低迷も長引くのではないかと感じています。これはあくまでも最悪なことを想定した、私の意見となります。
 当社はストレージという収納ビジネスを展開しています。おかげさまでニーズも非常に高く、海外の市場研究や商品開発を積極的に行っています。一方、人口が減少していく中、駐車場やアパートを今後増やしていくことはなかなか難しいと考えます。要するに今必要なことは人口が減少していく中でも必要な商品は何か、ということです。不動産は厳しい状況が表面的にどんどんでてきて、今後大変な流れになる可能性が大きいですが、その流れを把握しながらも積極策に打って出ることも十分にできると考えています。世の中の流れというのは全て悪いから悪いということはなく、悪い時だからこそのチャンスがあるという考え方もあります。やはり物事というのは、上がれば下がるのであって、遅かれ早かれどこかでは下がります。今はあらゆるものが高く、世界を見ても同じ状況です。これは不自然なことです。やはり不自然なことは自然になっていくという考え方は、自然の摂理のように正しいことではないかと思います。そして変化はチャンスであること、これも正しいのではないかと思います。
 時代は絶えず変化していくものです。いつまでも同じ状況が続かないということを冷静に考える時が来たと感じています。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道