世界基準不動産 - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.84  2006年 12月号

世界基準不動産

今回は「世界基準不動産」というテーマでお話しします。皆様もご存知の通り、世の中は二極化が進み、生活に苦しい人が増えている問題が起こっています。その反面、一部ではお金に余裕がある人や企業が増えていることも事実です。一部といっても世界的にみれば大変な数です。そのような高級な方々は一流のホテルに泊まりますから、ニューヨークの5つ星、4つ星ホテルはほとんど満室で、3つ星のホテルも一泊十万円近い値段です。ヨーロッパでもやはり同額程度は当たり前です。一流のホテルの値段とその近くにある一流でないホテルとは全く雲泥の差がつくわけです。日本でも一泊6、7万する高級ホテルから埋まっていくという現象が起こっています。

商業ビルでは、資金にとても余裕のある企業が広くて立地の良い一流のビルに競って入居します。その結果、丸の内を例にすると1フロア50〜100坪のビルは坪単価約2〜3万円に対し、ワンフロアで500坪以上あると坪単価5万円、6万円を超えるものもたくさんあるという事になります。同じ土地にあるのに値段が倍以上、下手すると3倍違うというのが現状です。銀座や表参道になると坪20万に近いという店舗もあります。日本では不動産の価値を坪当たりの値段で表現しますが、ただそれだけで高い、安いという判断はできないのではないでしょうか。これからは不動産の価値を単に土地の値段で比較する時代ではないと思います。

数年前に銀座にエルメスが出店したとき、とてつもない値段で不動産を買うと騒がれました。ところが、エルメスとしては、ビジネスをやる上で絶対重要な場所であり、ここで事業をやれば、この値段で買っても投資効率が高く、十分ペイできると判断しています。同じく表参道のルイヴィトンは坪単価がとても高いのですが、業務戦略上、表参道にあるという事がすごく重要であり、それが看板になり事業全体としてバランスが良いためにここに出店する必要があると判断しています。不動産の価値は企業、個人が必要であればあるほど上がり、値段が決まるのではないでしょうか。そう考えると、大手さんのように世界に通用するものを創り、事業性の高い地域の価値を上げる再開発が、改めて重要になってきます。

日本は15年もの長いデフレが続いたことで、物が安いということに慣れてしまって本当の価値が見出せず、良い物でさえお金を払うことに対する抵抗感があると思います。我々も不動産に対する考え方をもう一度考え直す時期が来ていますし、ものの見方や発想を変えていかなければなりません。世の中は本当にスピードが速いです。もっと世の中の変化に注目して、世界、日本の動きに対して自分たちがどのような影響を受けるのか、不動産を利用される方たちの気持ちも含めて考え、発想を広げていかないと判断を間違えてしまいます。

私も海外を色々見ていますが、日本の不動産は投資利回りが低いです。もっと可能性、潜在能力のある不動産もありますし、放っておくと、何もできない不動産もあります。接道や広さによって全く違うのですから、坪単価だけで判断してはいけませんし、本当の価値を見極め、ものの考え方や基準を変えていかないと取り残されてしまいます。世界、先進国を見ると、賃貸でもいい場所に素晴らしい物件がたくさんあります。日本はどちらかというと賃貸物件よりも分譲のほうが高いという傾向が続いてきましたが、賃貸でいい場所にいい住宅を建てる、これが日本でも大事になると思います。

雑貨屋がスーパーになり、コンビニ、あるいは大型のショッピングモールになっていったというような業態変化のように、不動産業界もそういう視点を持ち進化していかないといけません。他業種に比べ、我々不動産業界は出遅れていると思います。もっと勉強し、世界を見て世の中のためになる業になることを推進していこうと考えております。ダメな物を切り捨てていくというのではなく、それを次の時代に担う物として新しい提案していくという事が重要だと思います。我々もそういう視点に立って事業を展開していこうと考えておりますので、今後とも互いに協力し合い、参考し合い切磋琢磨したいと思います。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道