市況の変化とビジネスチャンス - エリアリンク株式会社

林尚道の
「時代を読む」

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VOL.199  2016年 07月号

市況の変化とビジネスチャンス

今回は「市況の変化とビジネスチャンス」というテーマでお話しいたします。
  今年2月、日銀はマイナス金利政策を導入しました。不動産市況にも少なからず影響が出ているように感じます。
  まず、日銀の狙い通り、金融機関の融資姿勢が積極的になっています。設備投資にはまだ消極的な企業が多いものの、より一層、低い金利で資金を調達できるようになり、不動産に関していえば、利回りが2〜4%程度でもキャッシュフローがまわるような状況を作り出しています。こうして「利回りが低くても、モノがあれば売れる」という市況が生まれ、不動産マーケットの過熱感は高まっているようにみえます。
  一方で、過去最高益となる上場企業が多いことからも日本の企業の景況感は改善しているようにみえますが、その恩恵は従業員の賃金まで波及しておらず、実際のところ、給料が順調に上がっていくというよりは、横ばいで推移している人が多いのではないかと思います。こうした背景もあり、住宅系の不動産に限って言えば、ある一定の価格帯を超えると動きが鈍っています。低金利時代に見合った特需はあるものの、買い手の選別の目は厳しくなっており、需要を見極めない限り、売りにくい在庫を抱えてしまうリスクは払しょくしがたい状況です。
  売りにくい在庫としては、例えば、駅から遠い立地のアパートなどが挙げられると思います。住宅系はある程度、入居者側のニーズが絞られてきていて、多少価格が高くなったとしても、利便性の良い「駅近」の物件が求められているからです。人口が減っているという背景もありますが、賃貸住宅に住む一般の人たちの選別の目も厳しくなっていますので、アパート建築に抵抗感を持つ土地オーナーも増えてきているように思います。
  今後、こういった個々の変化が大きな流れとなり、市況の潮目が変わることもあり得ると思います。消費税増税の延期や、マイナス金利、2020年の東京オリンピック、更には海外の政治・経済などの影響も複雑に絡み合って、先行きの不透明さは拭えない状況です。
  私は、従来からお伝えしてきた通り、不動産はその市況に合わせ、「売・買・休」のサイクルで商いをするべきだと考えています。不動産が値上がる局面では積極的に売る。不動産が値下がる局面では積極的に買う。そして、方向性が見通しにくい局面では売買を休む。一般的に、不動産業界には浮き沈みが激しいイメージがあると思いますが、こうしたサイクルでビジネスを展開すれば、リスクを抱えることなく、健全な経営を行うことができると考えています。
  当社では、今は休む時期と捉え、売買を休んでいる今だからこそできることに目を向けています。具体的には郊外の土地活用に適した2×4トランクのような新商品の開発や、資産管理の知識を持った営業マンの教育、リーシング力の強化が挙げられます。これらの取り組みの根底にあるのは「困ったところにビジネスあり」という創業以来、変わらない視点です。「オーナー様が困っていることは何なのか?」という視点は、運用の難しい土地を活用する新商品の開発につながりますし、「どう募集すると稼働が上がるのか?」という視点は入居者様のニーズを満たす物件改善やリーシング力の強化に繋がります。儲かることだけに目を向けるのではなく、困ったことに目を向けると、新しい発想が生まれるものです。
  少子高齢化や人口減少など社会の大きな変化は既に始まっています。明るいニュースが少ない時代ではありますが、まだまだ発掘されていないニーズもありますし、次なるビジネスチャンスは沢山あると思います。お困りごとやお悩みを伺い、解決策をご提案し、お客様に喜んでいただく。とてもシンプルなこの「御用聞き」のスタイルがこれからの時代のビジネスを作っていくと思います。先行きが不透明な時代だからこそ、必要とされるビジネスもあるはずなのです。今こそ、利益を最大化することを目的とせず、お悩みを解決してお客様に喜んでいただくことを重視し、また新たなビジネスチャンスを発掘していきたいと考えています。

代表取締役会長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道