時代を読む

VOL.198 2016年06月号

自然を都市から学ぶ

今回は「自然と都市から学ぶ」というテーマでお話しいたします。
  4月下旬からゴールデンウィークの休暇も含め、旅行や出張のため、ニュージーランド、軽井沢、シンガポールの3か所を訪問しました。これらの旅を通じて、環境によって自身のコンディションに変化があることに気づき、改めて自然と人間のかかわり方について考えるきっかけを得たように感じます。
  まず、ニュージーランドのクライストチャーチに滞在しました。ニュージーランドの国土は本州と同じくらいの広さで、人口は約450万人と日本と比較しても少ないため「人間よりもヒツジの方が多い」といわれるくらい田舎のように表現されることもある国ですが、私は実に素晴らしい場所だと思っています。何よりも美しい自然を気軽に楽しむことができることが魅力で、お年寄りも含めて幅広い年代の人たちがそんな環境のなか、散歩やサイクリングを楽しんでいる姿が印象的でした。健康的で明るい人が多い印象を受けますが、それもこの美しい自然のお蔭ではないかと思います。政治も透明性が高く、教育の分野でも生徒の個性を伸ばす方針が打ち出されており、自然と近代的な都市生活の調和がうまく保たれている国だと感じます。私自身も澄んだ空気や美味しい水、新鮮な食材を堪能して帰国しました。
  その後、丸1日、東京の本社で仕事をしてから、別荘のある軽井沢へ向かいました。ニュージーランドへの渡航が過密スケジュールだった分、後の仕事に支障が出ないよう、ここでは自宅で過ごすようにゆったりとした時間を楽しみました。私はどこにいても早朝の散歩を日課にしていますが、軽井沢の空気はとても澄んでいて、自然と呼吸が深まりますし、また野菜も美味しく、そこで過ごしているだけで身体が整っていくような感覚を覚えました。疲れを残さないためにも、ゆったりしようと心がけていましたが、自然の中にいるだけで不思議と心も身体も休まるのです。
  軽井沢での週末を過ごした後、シンガポールに出発しました。アジア・オセアニア各国のストレージ関連の企業が一堂に会するSSAA(セルフ ストレージ アソシエーション アジア)のイベントへの参加が主な目的です。滞在先はマリーナベイサンズというホテルでした。近年の成長が著しいシンガポールで人気のあるホテルだけに設備も最先端で、最上階にあたる57階には世界一高い場所にあるプールが設けられていたり、一周するだけでも1時間以上はかかるような大きなショッピングモールや外国人観光客向けのカジノも併設されています。国土は淡路島と同じくらいと小さな国ですが、建国から50年余りで国民一人あたりの名目GDPで日本を追い抜き、アメリカに次ぐ世界7位となるなど、建国の父といわれるリー・クアンユー氏の政治手腕は本当に素晴らしいものです。しかし困ったことに短い滞在にも関わらず、シンガポールでは体調が悪くなってしまいました。人間にとっての快適さを追求したような都市ですが、どうも私の肌には合わなかったようです。
  この3つの滞在先を改めて考えてみると、人間は自然の中にいなくてはいけないのではないかと感じています。自然に接したとき、その目に見えないエネルギーのようなものを感じて、人間は元気になるのではないでしょうか。本社と自宅のある東京にいる時間が長い分、私自身も自然から離れた生活に慣れてしまっていますが、ニュージーランドや軽井沢で過ごしているときの心地よさは、何物にも代えられません。それは、生命に必要なエネルギーを自然からもらっているからではないかと思うのです。
  人間には元来、素晴らしい力が備わっていると思います。ITの技術革新が進んだ結果、一方では頭を使わずとも何でも機械がやってくれるような時代になりました。身近な例だと、暗算をしない人が増えましたし、電話番号を暗記することもなくなりました。便利さと引き換えにどんどん人間の能力は低下しているように思います。自然のなかで身体が整っていく一方で、最先端の技術に囲まれた生活も便利です。しかし、人間本来の能力を最大限に発揮するためには、自然とのかかわり方を今一度捉えなおすことが重要なのではないかと気づいた旅となりました。

代表取締役社長 林 尚道

代表取締役社長 林 尚道